ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 186 2009-03-23

赤字民間医療機関のマネジメント上の課題
-2007年度の決算データから-

 

  • 赤字民間医療機関の経営的な課題を抽出することを目的とし、直近(2007年度)のマクロの決算データ(TKC調査, 2008)の分析を行った。
  • 直近の決算において、わが国の法人立民間病院の約1/4、法人立民間診療所の約1/3が赤字であったと考えられる。
  • 赤字民間医療機関は、黒字民間医療機関に比べて、その事業規模に比し大きな借入れを抱えており、財務の安全性においても課題がある。また、借入金の問題を含む財務の安全性の問題は、診療所に比べて病院の方が深刻である。
  • 病院・診療所ともに、赤字民間医療機関は、黒字民間医療機関に比べて、仕入れ・人件費・物件費のすべてにおいて、よりコストがかかっている。
  • 民間病院においては、必ずしも赤字機関が黒字機関に比べて生産性が低いというわけではなさそうだ。従業員一人当たり売上高で見る生産性においては、赤字民間病院のそれが黒字民間病院のそれをわずかながら上回っていた。このことと対照的に、赤字民間診療所の従業員一人当たり売上高は、黒字民間診療所のそれの85.4%に止まる。
  • 「民主導」であるのがわが国の医療提供体制の特徴の一つであり、民間医療機関は、国民の健康にとって極めて重要な国家戦略上の資源である。その文脈では、「直近の決算で民間病院の1/4超、民間診療所の1/3超が赤字」というのは、由々しき事態である。各主体の自主的な経営努力も重要であるが、民間医療機関の必要な資金の調達と必要な売上総利益の確保のための政策的な対応も求められるのではないか。今こそ、私たちが求める医療提供体制を明確にし、そこでの民間医療機関にどのような社会的価値を見出すのか、そしてその実現に向けどのような政策が必要かを議論し、実行に移すべき時である。

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