ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 187 2009-04-08

市場原理主義が日本と日本の医療にもたらしたもの
−これまでの構造改革の総括−

 

  • 2001年度に始まった構造改革の狙いは、その後「勝ち組」と言われることになる企業や個人に資源を集中し、彼らの利益を最大化することにあったと考えられる。
  • しかし構造改革が進む中で、多くの人が切り捨てられた。完全失業率は4%を超え、所得200万円未満の人も1,000万人以上に上っている。2008年6月1日時点でみると、本来の国民健康保険証がなかった人も推定380万人である。20歳代、30歳代では、健康問題を理由とする自殺が増えており、その背景にはうつ病患者の増加がある。
  • 構造改革、規制改革では、医療周辺市場が拡大するとの幻想も描かれた。しかし、民間保険会社は、多額の保険金不払い問題を起こした。株式会社が参入している介護保険でも、会社立事業所の不正請求等が問題になった。
  • アメリカでは、無保険者が約4,600万人に達しているが、高齢者や低所得者には公的医療保険がある。就職前の20歳代前後だけで見ると、無保険者は3割近くに上っている。
  • 国の歳出削減は「聖域なく」行われてきたが、歳入拡大につながる税、社会保障負担については、大企業や高所得者が優遇されている。富める者が社会的使命として幸せを分配していく制度改正が必要である。
  • 市場原理は格差社会をもたらし、日本人の意識も分断した。大胆な財政出動を伴う緊急対策とともに、日本人の意識改革が必要である。そして、そのために強いリーダーシップの下での政府の方針転換を切望する。

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