ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 192 2009-07-06

老朽化した医師会館等整備対応のための建設実態把握に関する研究
−「医師会の建物」における建設実態把握アンケート調査−

 

  • 老朽化した医師会館等への対応プロセスの実態把握、建替・改修の判断にかかる課題、及び求められる情報提供等相談の内容等を明らかにするため、平成19年度研究で把握した建替えや改修を行ったり、準備・検討中の医師会を対象にまずヒアリング調査(サンプリング調査)を行った。
    このヒアリング調査の結果、幅広い情報提供や、他医師会の建替・改修の概要を知りたいというニーズが明らかになり、基礎データ収集・整理のため、道府県医師会・郡市区医師会を対象に「医師会の建物における建設実態把握アンケート調査」(悉皆調査)を行った。
  • 多くの医師会において、老朽化が進んできた状態になると、既存建物では会員・職員・地域のニーズ等に物理的に対応出来ないとか、素人目にも建替え以外に老朽化への対処方法がないことが明らかになり、建替・改修の判断は比較的容易になされている状況にあると考えられる。
  • 「ヒアリング調査」「アンケート調査」での建替・改修ケース別の既存建物平均使用年数は、建替ケースの方が改修ケースに比べ各々の調査で8年前後多く、建替を行っていたケースでの既存建物の使用年数は、平均で約35�寛年経過しているものであった。
  • 「『医師会の建物』における建設実態把握アンケート調査」を本研究において行ったが、今後こうした調査を定期的に積み重ねてゆくことは、「医師会の建物」を建設するに際して、大きく寄与すると考えられる。また、こうした「アンケート調査」の結果は、幅広い情報提供の一助になるとも考えられる。
  • 老朽化した医師会の建物への対応方法として、必ずしも新築・改修で対応するだけでなく、適当な民間中古建物の「購入」や、公共遊休建物の「借用」という手法は、医師会財政負担の軽減化の点から検討の対象にしていくべきと考える。
  • 「アンケート調査」の結果、新築・購入した10件の「医師会の建物」の構造は、全て耐震構造で免震構造ではなかった。しかし医師会の建物の多くは、今後とも大震災等、災害時医療面での防災拠点となることが期待されていると考えられる。このため、都道府県医師会の建物等大きな規模や高い階数の建物を新築するに際しては、今後免震構造を積極的取り入れることが望まれる。
  • 「アンケート調査」結果の新築発注単価(都道府県医師会61.9万円/坪、郡市区医師会65.7万円/坪)を、全国の平成19年度事務所建築の工事費(予定額)単価と比較すると、その総計とほぼ同じ単価であり、医師会の建物の建設に際しては、平均的なコストの削減が図られていることが伺われる。
  • 今回のアンケート調査では、公益的な性格の強い施設・機能整備は一部に止まるか、整備対象となっていなかった。これら公益的な施設・機能の整備は、既存の医師会施設や地域の特性・条件等との兼ね合いで整備されるものではある。しかしそうした制約がクリア出来るのであれば、「医師会」の地域における役割を明らかにしていく視点から、「医師会の建物」に一体的に整備されることが望まれるものである。
  • 今回行った「アンケート調査」を定期的にフォローしていくとともに、今後医師会が果すべき役割を把握するソフトな内容に関するアンケート調査も、併せて実施することが課題と考えられる。

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