ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 196 2009-07-15

DPCという診療報酬政策についての病院経営面からの分析

 

  • DPC対象病院は現在1,283病院に拡大している。DPC病院でなければ生き残れないのかを検討するため、自治体病院を例に経営分析を行なった。
  • DPC対象病院には、入院包括部分について、出来高払いで計算した場合の前年度収益を保証する仕組み(調整係数)があるが、他の病院と比べて、医業収益、入院収益の伸び率は、必ずしも高くなかった。病院の経営効率を示す人件費生産性も、調整係数の影響を除外してみると、「DPCにより病院経営が効率化している」とはいえなかった。
  • DPC対象病院よりも優位にあったのは、H18準備病院である。まだ調整係数のメリットはないが、収益、利益ともにDPC対象病院を上回っていた。
  • H18準備病院は、大規模で平均在院日数が短い。つまりDPC対象病院になっているかどうかにかかわらず、相対的に急性期の大規模病院の経営状況が良い。このことは最近の診療報酬配分からも裏付けられる。
  • 逆にDPC対象病院では、調整係数が廃止されることが決まっており、集団で、医療費抑制のターゲットにされかねない。DPCという診療報酬政策は、医療の質を向上させるための長期的政策ではなく、医療費抑制のための短期的手法に過ぎなかったのではないかとも考えられる。
  • 現在、DPCの要件に達していない病院は、小規模で、平均在院日数が長く、医師数や看護職員数が少ない。しかし、地理的背景から状況を打開できない。医療は、平時の国家安全保障の要である。自治体の財政力(補助金)に委ねるのではなく、国民が安心して医療を受けられるよう、急性期偏重の診療報酬を見直すべきである。

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