ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 198 2009-09-10

米国医療関連産業の政治力、米国政府の対日圧力、
およびそれらがわが国の医療政策に与えてきた影響

 

  • 今日の米国において、医薬品・医療材料・医療機器等の医療関連産業は、政界に対して最も多額のロビイング活動経費を費やしている業界である。この事実から推し量るに、米国の医療関連産業は、米国政府に対して巨大な政治的圧力を持っていると考えられる。
  • 米国の医療関連産業の政治的圧力は、米国政府を通じて、わが国の医療政策に影響を及ぼしていると考えられる。現在、「成長のための日米経済パートナーシップ」の下、「規制改革及び競争政策イニシアティブ」という日米経済対話がなされており、そこにおいて医薬品・医療機器分野は、重点分野のひとつである。また、円高ドル安が急激に進み、外国企業の日本市場に対する門戸開放圧力が強くなった1980年代半ばから現在まで、医薬品・医療機器分野は、一貫して日米通商外交上の重点分野であり続けた。
  • 近年の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」における医薬品・医療機器分野の対日要望の実現状況をみると、主に、①同分野の製品の保険償還価格の算定ルールの改革と②同分野の規制改革(承認審査の迅速化や審査体制強化)の2点において、着実な進展が観察できた。また、この2点における対日要望の実現は、米国の医療関連産業の利益とも合致する。
  • 米国医療関連産業の政治的活動は、米国の政府を動かしうるほど、巨大である。そして、その影響力は対日通商外交上の圧力となって、わが国の医療政策に影響を及ぼしている。医療を含む社会保障の充実が増税の理由となる等、医療が重要な政策課題となっている今、私たちは、この事実と仕組みをよく知っておく必要がありはしまいか。


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