ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 197 2009-10-27

建設段階に応じた建設セカンドオピニオンに関する方法論の研究

 

  • 2007・2008年度(平成19・20年度)にわたる本研究は、「建設 セカンドオピニオンの方法論」に関する様々な課題に対応して、これまで の研究と同様にケーススタディを中心として、建設セカンドオピニオンの 提供作業の試行による検討結果の中から、これまでの研究結果と重複しな い部分を中心に取りまとめたものである。
  • ケーススタディ対象施設の分類は、「医師会館」1ケース、「民間病院」6 ケース、「民間診療所」4ケース、「自治体病院に準じるもの」1ケースの 計12ケースで、その施設整備の内容は、新規建設施設が9ケース、改修・ 用途変更の施設が2ケース、建設後の瑕疵発生段階の施設が1ケースであ った。
  • ケーススタディの結果からみた、建設セカンドオピニオンのあり方のポイ ントとしては、設計事務所及び建設会社選定の段階での建設セカンドオピ ニオンが非常に重要であると考えられる。
  • 設計事務所を選定する段階では、設計事務所選定の主要な方法として設計 企画書コンペ(「プロポーザル設計競技」とも言う)があるが、この選定過 程で発注者の設計事務所に対する要求を明記し、これを設計事務所に認め させることが重要である。
  • 設計事務所より提出してもらう誓約書で、設計競技参加に際しては「プロ ポーザル設計競技実施要領(基本計画・設計条件)に従うこと」、及び「設計 者として選定された場合には、『四会連合協定による契約書』を修正した契 約書等書式により契約すること」を誓約してもらう。これにより、医師会 が求める「設計への取り組み姿勢」や「設計業務委託契約約款」を認めさ せることが出来る。
  • 特に、ケーススタディで問題が明らかになった、設計図書に関する著作権 について、選定条件としてその帰属形態を共有にすることを提示し、設計 事務所との通常の設計業務委託契約約款の修正を認めさせることが出来る。 これにより設計事務所等の意向に影響されずに、発注者の裁量で設計事務 所を解約することや、将来改修等を行うことが出来る。
  • また、実施設計図書をもとに積算業務を行うことが、設計業務内容のチェ ックにつながる。このため、設計事務所との契約から、実施設計図書に対 応する積算業務をはずし、設計事務所以外の積算事務所に委託して積算を してもらうこととすべきである。
  • 建設会社選定の段階では、入札の基本方針を入札者に提示する現場説明書 で、競争原理を確保するための落札者決定方式及び、発注者の利益を確保 するための工事請負契約約款を示すべきである。
  • 入札の落札者決定方式は様々な方式があるが、特に「3 回の入札と交渉によ っても予定価格に達しない場合は、本入札参加者以外の企業を対象として、 新たな入札を行う」ことを明記し、このルールに則り粛々と入札を進める ことが重要である。
  • また、工事請負契約約款は、発注者の利益を確保する視点から、民間(旧四 会)連合協定工事請負契約約款を加除訂正したもので契約することを、入札 参加の条件として提示することが重要である。
  • 加除訂正する重要な項目としては、「第9 条 管理者」の設備機器の選定の 承認に関すること、「第19 条 第三者損害」にかかる請負者の負担に関する こと、「第21 条 不可抗力による損害」にかかる地震を除く請負者の負担に 関すること、及び「第27 条 瑕疵の担保」期間の民法に基づく修正といっ たことがある。

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