ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 202 2009-11-19

建設セカンドオピニオン提供体制のあり方に関する研究
−都道府県・郡市区医師会及び日医会員を対象とした提供体制について−

 

  • 日医総研では、平成14 年度から「建設セカンドオピニオン」の研究を始めた。その背景としては、医療機関の建設単価は高いのではないか、すなわち医療機関の建物は多少特殊であるにしても、通常の建物に比べて高すぎるのではないかというのが発端である。
  • これまでの研究の結果、建設コスト削減効果等様々な効果が明らかになるとともに、その方法論が実践の場で活用出来る、すなわち業務として建設セカンドオピニオンを提供出来る状況になりつつある。
  • 一方、地域医師会や日医会員から求められる建設セカンドオピニオンを、どのような体制で提供すべきかが課題となってきた。
  • そこで本研究は、日医における費用負担のあり方についての検討を踏まえつつ、地域医師会や日医会員からの建設セカンドオピニオン提供への要請に対応した、提供体制のあり方について検討した結果を取りまとめたものである。
  • これまでの研究では、平成15 年度から平成20 年度の6 年間で、延べ41 件のケーススタディ研究を行ってきた。このうち、医師会病院・医師会館といった医師会関連施設は13 件で、全体の約1/3 となっている。
  • こうしたケーススタディ研究の典型的な成果としては、建設発注コストの削減(41 件のケーススタディの中で33.6 億円の削減)や、発注者にとって不利な契約約款(例えば、ゼネコンによる瑕疵担保期間(RC 造2 年)や不法行為時効の短縮(10 年))の解消(民法により各々10 年と20 年に)がある。
  • また、不備な契約書より良いと考えられる「四会連合協定契約書」には、設計委託した設計図書の著作権が、設計事務所のみに帰属すると明記された約款条文の問題が明らかになった。
  • そして、その方法論により日医や地域医師会及び日医会員が、建設コスト削減や省エネに自主的に取り組むことは、経営効率化や省エネへの自主努力として、対外的にも示せることと考えられる。
  • 更に、日医が研究段階にせよ建設面での第三者評価機能のノウハウを持つことにより、医師会や医療機関が設計事務所やゼネコンへ建設を発注する際の、コスト高止まりへの牽制機能の役目を果たしているという評価もある。
  • 今後、建設セカンドオピニオンは病院経営の立場にたったコスト削減だけでなく、地球温暖化対策としての「省エネ」面での役割も大きく求められている。
  • そこで、今後都道府県・郡市区医師会及び日医会員の関係施設に対する、建設セカンドオピニオンの定常的な業務としての提供は、建設セカンドオピニオンを受ける医師会・会員各々の費用負担のもとに、信頼のおける外部機関が提供するものとする。一方日医総研は、この外部機関を医師会・会員に紹介する。このため、日医総研はこの外部機関育成のための各種支援措置を図り、地域医師会及び日医会員が適正な建設セカンドオピニオンの提供を受けられるような、適切な対応を図ることとする。
  • 以上の他、日医総研においては、「建設セカンドオピニオン研究」の研究ストックを維持・拡充するとともに、その情報を広く発信し、また四病院団体とも情報発信面やこの外部機関活用に際しての連携を図っていく。
  • 外部機関における基本方針としては、「a 経験豊富な専門家からなる公益的な社団法人等の団体を育成・活用」することを基本に、今後地域医師会や日医会員に対して建設セカンドオピニオンを提供する、新たな体制づくりを図る。

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