ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 210 2009-12-28

労働党政権による英国NHS改革はどう進んでいるか?

 

  • 労働党政権は2000 年のNHSプラン以来の改革を継続している。その結果、待機患者数や死亡率の減少という成果が得られている。しかし、最新の2008〜2009 年データでは、部分的に改革路線に陰りが見えるため、今後を注視する必要がある。
  • NHSへの公的支出は最近10 年間で実質ベースで1.87 倍に拡大している。この増加率はGDP 成長率よりもかなり高くなっている。
  • NHSの財源は安定的で、約75%を税金から、約20%を国民保険からとなっている。これらの公的資金で全体の約95%の資金を調達している。
  • 国家歳出における医療の位置づけは高い。2009 年度の国家歳出予算では医療は 17.7%を占め、社会保護に次ぐ2 番目の大きさである。歳出実績で見ると、医療への歳出は最近10 年間で1.85 倍となっており突出している。
  • 英国の総医療費の対GDP 比は1997 年の6.6%から2006 年の8.5%へと大きく伸びてきたが、2007 年は8.4%へと0.1 ポイント低下した。
  • NHSの生産性は、医療の質と健康の価値の両方を評価すれば、明確に改善傾向を読み取ることができる。
  • 医師数は最近10 年間で顕著かつ突出して増加し、約4 万人の増加となっている。救急科、小児科、臨床腫瘍科での増加が著しい。他方、看護師数は伸びが鈍化し、2005 年から横ばいで推移している。
  • 入院待機患者総数は最近10 年間で約120 万人から約60 万人へ半減した。13 週間以上の外来待機患者数は50 万人規模から100 人規模へ大幅縮小した。
  • ガン死亡率と循環器系疾患死亡率については、ターゲットに到達または到達する見込みである。しかし、他の指標はターゲットに到達困難な状況にある。
  • 国民のNHS満足度は2001〜2008 年で継続的に上昇し、2008 年12 月ではデータを取り始めた2000 年以来で最大の73%の満足度となっている。

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