ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 216 2010-06-30

医療の地域格差はどれぐらいあるか?
二次医療圏を単位としたデータ分析
【病院編】

 

  • 本ワーキングペーパーは、医師数、病院・病床、救急対応、医療サービス、医療設備という広範囲な視点から一般に入手可能なデータを用いて、二次医療圏を単位とした医療提供体制・状況の地域格差についてデータ整理・分析を行った。
  • 人口当たり医師数については、医療施設従事医師数、主たる診療科別の医療施設従事医師数、病院医師数のいずれにおいても二次医療圏間に格差が認められる。 分布としては、医師数の少ない方へ大きく偏っており、医師数が相対的に少ない二次医療圏の方が多い。これは、医師不足によって何らかの問題が起きるリスクが高い二次医療圏の方が多いということを意味している。
  • 診療科別(内科、外科、小児科、産科、脳神経外科、多発外傷への対応)に見た人口当たりの夜間救急対応病院数(ほぼ毎日対応可能、週3 日以上対応可能のそれぞれ)についても地域格差が存在する。診療科間で地域格差の大きさを比較すると、小児科と産科が他に比べてかなり大きい。
  • 提供医療サービス(全身麻酔、悪性腫瘍手術、人工透析、分娩、帝王切開娩出術)ごとに、人口当たりの実施病院数(人工透析については機器台数)を見ると、同様に地域格差が認められる。中では、分娩と帝王切開手術の地域格差が他と比べて非常に大きい。
  • 二次医療圏の医療提供体制の総合評価指標を試論として作成した。評価項目はⅠ.医師数、Ⅱ.病院・病床、Ⅲ.救急対応、Ⅳ.医療サービス、Ⅴ.医療設備の5つである。特筆すべきは、尾張中部(愛知県)、川崎北部(神奈川県)、横浜北部(神奈川県)などの人口密度の高い地域が下位グループに多く含まれていることである。ただし、これらの地域は、交通アクセスの良い近隣に医療提供体制が充実している地域があるため、問題があるかどうかは慎重な議論が必要である。

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