ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 217 2010-07-05

自治体病院の入院基本料別経営分析
−15対1の入院基本料の引き下げは妥当であったか−

 

  • 医療経済実態調査によると、「15対1」の病院が黒字であるとして、2010年度の診療報酬改定では、一般病棟入院基本料「15対1」が引き下げられた。しかし、医療経済実態調査は客体数が少なく、かつ単月調査である。自治体病院すべてを分析した結果、「15対1」の赤字幅は最大であった。
  • 「15対1」の自治体病院は、給与費率が高く赤字であるが、給与自体が高いわけではない。投入している労働量に比べて診療報酬上の評価が低い。また、「15対1」は入院基本料が低いだけでなく、加算も少なく、2010年度改定は大きな痛手になったと推察される。
  • 「15対1」は中医協で慢性期と認識されつつあり、このままでは一般病院としての生き残りは難しい。しかし、「15対1」は地方にあって、看護職員の確保が困難であり、「7対1」等を目指せない。慢性期に近いとはいえ、重症の患者や看護必要度の高い患者が存在することも事実である。地方によっては地域医療を守っている病院もある。
  • 重症患者がほとんどなく、看護必要度が低い病院もあるだろう。これらの病院は、より慢性期型の病院あるいは療養病床にシフトすることになるかもしれない。しかし、少なくとも、今後の療養病床等のあり方がきちんと示され、評価されるまで、淘汰させて良いはずはない。
  • 2010年度の診療報酬改定の検証は、中医協の医療経済実態調査によって行われることになるが、同調査は、決算データでかつ定点観測で行うべきである。厚生労働省の予算に制約があるというのであれば、民間データの併用を検討すべきである。

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