ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 231 2011-04-01

株式会社等による医療機関経営の現状

 

  • 2001年、総合規制改革会議(当時)は、株式会社によって医療の質を担保しつつ、経営の効率化、近代化を進めることができるとして、株式会社の医療への参入を主張した。その後も、株式会社参入を求める動きがあるが、株式会社立等の医療機関の経営状況を概観したところ、株式会社が医療経営の近代化、効率化を進めるというエビデンスは得られなかった。
  • 2006年、構造改革特区に株式会社立診療所が開設されたが、少なくとも現在のところ、特段の成果は見られない。
  • 医療法施行以前に設立された会社立の病院が撤退しつつある。企業が事業を手放すということは、事業に魅力がないということである。医療機関を保有することは企業にとって負担になっていると考えられる。
  • 株式会社等の健康保険組合が設置する医療機関数は減少している。しかし赤字は毎年ほぼ同じ200億円近くである。医療機関経営がますます厳しくなっていることがうかがえる。
  • 健保連大阪中央病院は、保健予防活動収益の比率が高く黒字であるが、医業利益率は1.6%であった。TKC医業経営指標によると一般病院の医業利益率は4.1%、中医協医療経済実態調査によると一般病院の医業利益率は1.4%であるので、大阪中央病院の医業利益率はきわめて高いわけではない。
  • セコムは、不動産賃貸、債務保証で医療機関と提携している。セコムの事業は黒字であるが、提携医療機関を運営する医療法人2法人の医業利益率は、いずれも1%台に止まっている。また、債務保証により借り入れを行いやすいためか、借入金依存度が高かった。
  • オリックスは、2005年3月、主要株主となって特定目的会社(以下、PFI会社)を立ち上げ、PFI事業による高知医療センターの医療周辺事業を受託した。しかし、PFI会社が契約した材料費率を超過するなどして、赤字がつづいた。PFI会社は、この間もマネジメントフィーを請求しつづけ、結局、2010年3月にPFI事業を解消した。

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