ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 240 2011-09-20

特定機能病院としての大学病院の 現状について

 

  • 国立大学附属病院(以下、国立大学病院)は、「基本方針2006」以降、2009年度まで運営費交付金を減らされてきており、病院収入を増加させている。しかし、仮に運営費交付金がまったくないとして計算すると、2009年度の利益率は▲12.4%という大幅な赤字である。寄附金や受託研究も貴重な収入であるが、大学間の格差がかなりある。病院収入の増加を目指すあまり、教育研究時間が大幅に削減されているという声もある。こういった状況は公立大学附属病院、私立大学附属病院(以下あわせて大学病院)も同様であろう。
  • 大学病院本院はすべて特定機能病院である。特定機能病院には高度の医療の提供、開発などが求められており、診療報酬上の評価もあるが、現在の特定機能病院の要件は、大学病院でも達成が容易ではないところが少なくない。
  • しかし、大学病院の機能は、高い水準での医学教育、医学研究、それにもとづく高度の医療を提供しており、これが日本の医療水準の高さを支えている。大学病院の機能は、運営費交付金、診療報酬の両方から支えていくべきである。
  • 大学病院こそを評価する新たな仕組みや診療報酬体系があっても良いのではないか。そうすれば診療報酬という同じ土俵の上で、大学病院と民間医療機関等が厳しい競争を繰り広げることも回避される。
  • 大学病院を別建て評価する場合には、現在の特定機能病院のように外形的な実績だけでなく、内容、水準をフォローする。特に地域でひとつの大学病院の場合、先進医療の患者数や論文数は少なくても、地域で重要な役割を果たしていることもあり、そういった面も評価したい。
  • さらに大学病院の機能を強化するためには、紹介制を徹底し、一般的な外来機能を限定する。これまでのところ、初診時特別料金では成果が見られない。地域の医療提供体制と一体となった取り組みや、国として大学病院の役割・機能について国民に啓発することも必要である。

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