ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 241 2011-10-24

オバマ政権の通商政策とTPP、および日本の医療

 

  • オバマ政権の経済政策の主たる目標は「経済成長と雇用創出」である。2011年以降は、特に「雇用創出」の面で、「輸出拡大」による効果が期待されている。この「輸出拡大」計画は、5年間(2009〜2014年)で名目値の倍増を目標としている。そこでは、既存の協定を通じた輸出促進、貿易円滑化のための政府支援と並んで、「新たな市場の開放」を重視している。
  • 同政権は、「新たな市場の開放」のためには、「関税と非関税障壁の引下げ」が重要と考えている。そのために、主要新興国(中・印・ブラジル)との二国間交渉やパナマ・コロンビア・韓国とのFTA、WTOドーハラウンドの妥結と並んで、TPPを推進することが重要としている。
  • 米国政府は、同じ高所得国グループに属する米国やEU諸国に比べ、日本の貿易体制が制限的であると見ている。そして、その要因は日本の非関税障壁にあると考えている。また、同様の論理でいけば、日本がTPPに参加した場合、非関税障壁に加え、日本の農産物の関税を問題視するであろうと思われる。
  • 医療関連分野について言えば、現在、米国政府は、主に(1)保険、(2)医薬品・医療機器、(3)医療IT、(4)医療サービスの4分野について、日本政府に非関税障壁の撤廃あるいは削減を要求している。
  • 日本のTPP参加は、「米国政府の対日要求が実現するチャネル」を増やす。しかし、日本が不参加の場合も、上記チャネルが無くなる訳ではない。参加の有無に関わらず、米国の政界・財界・産業界の思惑は存在し、それを背景とした米国政府の対日要求は存在する。検証すべきは、「(外圧があることを所与の条件として、)わが国の国民・患者の利益に反して外圧が実現されにくい仕組みを日本政府が持ち、その仕組みが機能しているかどうか」である。

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