ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 245 2011-11-28

「第18回 医療経済実態調査(医療機関等調査)報告
−平成23年6月実施−」の分析

 

調査そのものについて

  • 今回の「医療経済実態調査」から、直近2 事業年度(年間データ)の定点調査が追加された。その結果、これまでの6 月単月・非定点調査の信頼性が否定された。今後は、予算を年間データによる定点調査に集中し、対象施設数の拡大を図るべきである。
  • また、対象施設数が多い「TKC 医業経営指標」など、民間データを中医協の場で公式資料として活用することを提案する。
  • 「医療経済実態調査」の結果を公表する際には、結果の見方についてのさまざまな留意点、たとえば、産婦人科は保険診療収益よりも自費診療収益が多く、診療報酬改定の影響をダイレクトに反映しないことなどを、あわせて説明すべきである。
  • 今後、調査・集計手法について、以下の検討、改良を求めたい。
    ①医療法人、個人は、そもそも損益の意味合いが異なる。特に損益率や費用構成については、医療法人・個人を統合して、「全体」として示すべきではない。
    ②現状、病床数や一般病棟入院基本料(7 対1)などの基本データは、調査時点でのみの把握であり、たとえば、前々年度に 10対1、前年度に 7対1 という変化があった場合には反映できない。できるだけ、基本データも決算期ごとに把握することが望ましい。
    ③診療所は、介護収益や自費診療収益が大きい施設も含めた集計であるが、入院診療収益ありの産婦人科では自費診療等の割合が 6割を超えている。自費診療収益等の割合が高い施設は外した集計も必要である。
    ④診療所では、診療科別に見たとき、「その他」が突出した動きを示している。これは人工透析主体の医療機関と推察されるが 、人工透析も含めて、診療科カテゴリを見直すべき時期にきているのではないかと考えられる。

「第18回 医療経済実態調査」の分析結果から

  • DPC 対象病院、特定機能病院、入院収益ありの診療所では、前回診療報酬改定の成果が一定程度見られた。入院収益なしの診療所では、あまり改善は見られず、特に青色申告(省略形式)の個人診療所では非常に厳しい実態であった。
  • 精神科病院では、医業収益がほとんど伸びず、損益率(利益率)が悪化した。
  • 国公立病院では、施設数が少ないこと、定点調査ではないことを断った上でいえば、一般病棟入院基本料「7 対1・10 対1」のグループで損益率が相対的に高く、損益率の低い「13 対1・15 対1」グループとかなり差が見られた。
  • 特定機能病院は、医業収益は大幅に伸びたが、多くが大学附属病院で、もともと損益構造が異なることもあり、依然として赤字である。診療報酬体系における特定機能病院のあり方、大学病院に対する診療報酬以外の財源(国立大学附属病院の運営費交付金など)のあり方の検討も課題かと考える。
  • 給与費については、おおむね病院勤務医師の処遇が改善されたと受け止められているようであるが、医療法人では、病院長、勤務医師いずれも給与が減少している。民間病院の原資は、ほとんどが診療報酬であるので、この中で、給与費を削減した(せざるを得なかった)ということは深刻に受け止めるべきである。

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