ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 247 2012-01-11

病院経営の現状(2010 年度診療報酬改定後)
−国立・公的・社会保険・大学病院等−

 

  • 国立病院等には運営費交付金などがあるが、医療法人の総収入のほとんどは診療報酬による医業収入である。
  • 医療法人は医業利益率がもっとも高いが、当期純利益率は運営費交付金がある国立病院がもっとも高い。医療法人は法人税等を支払うが、公的医療機関は非課税なので、医療法人と公的医療機関の当期利益率は同水準である。
  • 診療報酬を決定する際には、開設者によっては運営費交付金などの収入があること、法人税等が非課税であることは考慮されておらず、医療法人が不利であることが否めない。
  • 医療法人に比べて、公的医療機関等の総資本経常利益率は低い。これは公的医療機関等では、経常利益が小さくても大きな資本を投下していることを示している。
  • 医療法人の借入金依存度は国立病院、公的医療機関等に比べて高い。借入金返済の負担だけでなく、債務保証に対する経営者の精神的負担も少なくないものと推察される。
  • 医業収入の対前年度比は、医療法人でもっとも低い。しかし、医業収入が大幅に伸びた国立病院、社会保険病院等では材料費等のコストも増加しており、医業利益率はそれほど改善していない。医療法人では、材料費は横ばいに抑えられているが、こうした経営努力については、診療報酬改定の際に考慮されていない。
  • 診療報酬改定の影響とはいえないが、2009 年度から2010 年度にかけて棚卸資産回転日数が増加している。今後、中長期的な推移をフォローする必要があるが、医薬品などの在庫を多品種抱えざるを得なくなっており、運転資金、短期借入金などに影響を与えている可能性がある。
  • 国立病院を例にみると、給与費率と材料費率は負の関係にある。一般に、給与費率が高い病院は慢性期型、材料費率が高い病院は急性期型である。急性期型の病院は、慢性期型の病院に比べると(あくまで一般的、相対的な比較)、医療機器などへ投資するため、より多くの再投資費用(利益)が必要になる。したがって、同じ医業利益率といっても、病院のあり方によってその重みは大きく異なる。
  • 国立大学附属病院、公立大学附属病院ともに運営費交付金が減額されているが、その分を診療報酬による医業収入でカバーしている。運営費交付金がなくても、黒字になるという病院も出てきている。社会保障審議会医療部会でも特定機能病院(大学病院の本院はすべて特定機能病院)の見直しが進められているが、今後も、教育機能を担う大学病院が、診療報酬を主財源として自律的に運営する方向を目指すべきかどうかも検討課題であろう。

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