ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 250 2012-02-08

地理空間情報に基づいた「医療アクセスの地域格差」の研究:
四国のケース・スタディ

 

  • 二次医療圏単位の分析には3 つの問題がある。第一に、人口規模、面積、地理空間的区分の差異が無視できないほど大きいこと。第二に、越境でのアクセスを無視すること。第三に、同一医療圏内でもアクセスが困難な場合を考慮しないこと。
  • 本論文では、上記のような行政区分別の分析の問題点を克服するため、地理空間情報システム(GIS)を用いた医療アクセスの分析を行った。
  • 四国をケースとして、三次救急医療へのアクセシビリティ、日常的な医療へのアクセシビリティ、産科・小児科へのアクセシビリティについて、アクセス可能な医療機関数、人口当たりのアクセス可能な医療機関数、人口当たりのアクセス可能な医師数の分析結果をマップ上へ可視化し、合わせて数値分析も行った。
  • 本論文での地理空間情報システム(GIS)を利用した分析にはいくつかの利点がある。行政区分の境界を越えたアクセスを考慮できること、人口の大きさに影響を受けない小さい地理空間単位での分析が可能であること、交通網を考慮したアクセシビリティの分析ができること。
  • しかし、データの制約、可視化における結果の印象への影響、アクセシビリティの定義そのものなどには課題があり、さらなる研究が必要である。
  • 四国のケース・スタディから出てきたポイントとしては、四国四県の県庁所在地を中心とする都市域の医療アクセシビリティは良好に見えるが、人口を考慮すると必ずしも都市域で非常に良好な状況にあるわけではない。さらに、そうした都市域とそれ以外の地域の間には地域格差が歴然と存在している。
  • 高知県と愛媛県が他県に比べて平均的に医療アクセス状況が悪く、全ての指標についてというわけではないが、県内の地域格差も相対的に大きくなっている。
  • 逆に、香川県は面積が小さく都市域が連続的に広がっているという利点があり、医療アクセス状況が比較的良好で、県内の地域格差も相対的に小さい。

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