ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 256 2012-03-29

胎児医療における米国の現状と日本の課題

 

  • 四半世紀以上、胎児医療を推進してきた米国の現況は次のとおりである。
    (1)臨床試験から標準的治療への移行期にある。直視下胎児手術、胎児内視鏡手術、FIGS-IT、EXITが実施されている。
    (2)MOMS(胎児期の脊髄髄膜瘤修復術の効果と安全性に関する多施設共同ランダム化比較試験)では全例に保険が適用された。他疾病も民間健康保険が適用される場合もある。二分脊椎症に生涯要する医療費は約3,700万円、非医療費は約460万円と推計されている。
    (3)胎児医療の臨床には、数十名の専門家によるチームワーク、専属コーディネーター、カウンセラーが不可欠である。
    (4)法と倫理は胎児医療の発展を後追いする形となっており、 胎児の法的権利に関する統一見解は確立していない。出生前診断での女性のプライバシー・自己決定権と、胎児保護が拮抗する際の議論が熟していない。
    (5)健康保険、経済格差、医療訴訟への対応等、安心して医療提供・受診ができる法・指針整備の必要性が指摘されている。
  • これらの点を鑑み、今後、日本が胎児医療に関し検討の余地がある領域は次の7点である。
    (1)胎児医療の卓越した研究教育拠点(COE)の設立・運営
    (2)周辺環境の整備:出生前診断、カウンセリング、インフォームド・コンセント
    (3)人材育成:医療従事者、コーディネーター、遺伝子カウンセラー      
    (4)胎児医療の移行期における、得意分野の選択・集中
    (5)関連法・指針(ガイドライン)の整備  
    (6)保険適用の検討  
    (7)医療訴訟への備え

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