ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 258 2012-04-18

介護サービスを提供する株式会社の現状

 

護保険下の費用の伸び等を念頭におきつつ、介護サービス企業について分析した結果、医療機関への株式会社参入に対し、以下のような示唆が得られた。

 

  • 株式会社が医療機関経営に参画する場合、現在の診療報酬は抑制的であって、配当のための十分な利益を確保できないので、自由診療主体に経営するか、自由診療市場の拡大を求めて、混合診療の全面解禁を要求することが予想される。介護では介護保険下の費用以上に、大手企業の売上高が伸びている。医療においても混合診療が全面解禁され、株式会社が参入すれば、これまでの医療費の伸び以上に、自由診療分を加えた市場が拡大するであろう。自由診療市場のプレーヤーは潤うが、患者負担は増大する。また株式会社はさらなる収益アップを目指し、患者に対して、さまざまな自由価格の医療周辺付帯サービスを提案してくるであろう。
  • 自由診療市場は自由に価格を設定できる。そこでは、介護サービス企業のように株式会社病院が一定の収益性をあげることができる。獲得した利益が投資家に優先的に還元されることは、株式会社では当然のことである。
  • 公的介護保険の給付内で介護サービスを提供している事業者からは、経営が厳しいとの声もあがっている。しかし、今回分析した介護サービス企業大手では、最近の経営状態はおおむね良好である。介護保険下では赤字であっても、利用者を囲い込み、給付対象外のサービスの提供も含めて相乗効果を出している可能性がある。そういう意味では、議論が飛躍するが、医療において自由診療が拡大すれば、医療機関、医療周辺サービス企業、民間保険企業が連携して市場を奪いにくるであろう。

ダウンロード  (約 838 KB)