ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 255 2012-05-09

医療分野におけるID番号のあり方に関する考察

 

  • 社会保障と税の一体改革の中で、番号制度の検討が進められており、平成24年度の通常国会に「マイナンバー法案」として提出し、平成27年度から利用開始するとされている。
  • 政府の「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」での検討内容をみると、「番号」は、納税者番号として活用することで正確な所得・資産の把握をして、所得比例年金や給付付き税額控除制度の実現、長期に渡って個人を特定することで年金記録の管理を行う、医療保険における記号・番号として活用することで過誤調整事務の負担軽減等を実現するための基盤と位置付けられている。
  • 医療分野に関して、保険者間における過誤調整事務での利用とされていることから、医療保険の資格喪失に伴う受診も含まれている。従って、医療機関の窓口において非保険者資格の即時確認を行うことができる可能性があったり、将来的には、地域医療連携における患者番号として、医療情報の連携時の患者特定に活用することができるかもしれないと、一定程度のメリットは出てくる。
  • 一方で、医療情報という機微性の高い情報は、疾患によっては個人に対する差別や社会的地位の喪失を招きかねないものであり、より一層の個人情報保護対策、プライバシーの保護が必要とされる情報であり、過去、個人情報保護法が成立した際の衆参両院における個別法も含めた特段の措置を講じるべきという付帯決議の実現が、今回の制度開始時には実現している必要がある。
  • また、負担・分担の公平性の確保の名目のもと、個人の所得の多寡で医療に対する制限をかけ、フリーアクセスが阻害されるような仕組みであってはならない。
  • 従って、メリット・デメリットを整理した上で、医療分野の特別法等の環境整備が整うまでは、少なくとも医療分野と税分野は切り離した制度設計であることが望まれる。

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