ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 265 2012-09-12

日本医師会「患者窓口負担についてのアンケート調査」結果報告

 

  • 患者一部負担の負担感は、当然ながら負担割合が高いほど高くなるが、1割負担の患者に比べて2割負担の患者はかなり負担感が高く、3割負担の患者は2割負担の患者よりやや高い程度である。
  • 今後、窓口での支払いが増えたとき受診回数を減らすという患者の割合は、1割負担の患者でもっとも低く、それに比べて2割負担の患者ではかなり多い。3割負担の患者は2割負担の患者とほぼ同じである。
  • 過去1年間に経済的な理由により受診しなかったことがある患者の割合も1割負担の患者で低く、2割負担の患者は1割負担の患者に比べて多い。そして2割負担、3割負担の患者ではほぼ同じ割合である。
  • 以上のように、1割負担の患者と2割および3割負担の患者には、負担感や受診行動に明らかな違いがみられる。
  • 過去1 年間に経済的な理由により受診しなかったことがある患者(受診差し控えを経験した患者)は約1 割であり、このうち半数強が受診を控えた結果症状が悪化したと回答している。受診差し控えを経験した患者の割合は、患者一部負担割合に比例して多く、2割負担以上で1割を超える。
  • 受診差し控えを経験した患者は、経験していない患者に比べて、今後窓口での支払いが増えたときに受診回数を減らすという回答が多い。この背景には、所得格差等もあると推察されるが、今後、受診を差し控えない患者、差し控える患者の格差が拡大していくことが懸念される。受診時定額負担や、実質的な患者負担増につながる混合診療の全面解禁も含め、患者負担の引き上げは慎重に検討されなければならない。
  • 今回のアンケート調査は、試行的な面もあり不十分なところもあったが、多くの患者さんの声を聴くことができたという点で意味があったと考える。厚生労働省は「国民生活基礎調査」などから、年齢階級別1人当たり患者負担額を試算し、たとえば70-74 歳の患者一部負担割合を本則の2割にしても、収入に対してさほど大きな負担にならないという数字を示している。しかし、収入や所得は正確に捕捉できない。それ以前に、受診行動への影響、その結果としての重篤化の懸念を考慮する必要がある。机上の計算のみならず、患者へ与える影響を把握すべく、患者の声に耳を傾ける必要がある。

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