ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 263 2012-10-18

2011年病院における地球温暖化対策自主行動計画フォローアップ研究

 

  • 本研究は、2011年度日本医師会、四病院団体及び東京都からなる「病院における地球温暖化対策推進協議会」に報告した、「病院における地球温暖化対策自主行動計画フォローアップ報告」を中心に、2012年3月末時点で取りまとめたものである。
  • 「病院における地球温暖化対策推進協議会」はこれを受け、国に対し地球温暖化対策自主行動計画フォローアップ報告を行った。
  • すなわち、この「病院における地球温暖化対策自主行動計画フォローアップ研究」は、上記協議会が2008年8月に策定した「病院における地球温暖化対策自主行動計画」について、2010年4月〜2011年3月まで(2010年度)における数値目標の達成度や温暖化対策の取組状況を中心に、アンケート実態調査により第三回目のフォローアップ調査をした結果が中心となっている。
  • 2010年度のCO2排出原単位の実績は、前年の2009年度比で2.0%増となり、目標とした年率1.0%減を上回ったが、基準年度2006年度(100.0)比では89.1(年率2.84%削減)となり、平均では目標とした年率1.0%減を下回った。(表1-1、ページ1-4)
    2010年度CO2排出原単位の対前年比が増加した背景として、CO2排出原単位に大きく影響するエネルギー消費原単位が、2009年度に対し2010年度は2.9%増加しており、引き続きこのエネルギー消費原単位とCO2排出原単位の削減対策を進めていくことが重要である。
  • CO2排出原単位は、2007年度以降対前年比1%以上の減少を続けてきたが、2010年度になって初めて対前年度増加に転じた。その要因として2010年度は、気象条件の変化、天候が夏期は暑く冬期は寒かったため、冷暖房費が大きく増加したためと考えられる。(表3-2、ページ1-17)
  • そして、近年重油・灯油から電力・ガス(都市ガス・LPG)へのエネルギー転換が進み、重油・灯油の消費量は減少したが、2010年度電力、ガスの消費量が増加したため、CO2排出原単位は増加したと考えられる。(ページ1-15、2010年度におけるCO2排出量増減の要因)
  • 2010年度のCO2排出量全体も対前年度比4.9%増加した。その要因としては上記要因に加え、病院の活動量を示す延べ床面積が2008年度に一度減少したものの、その後一貫して増加してきたことが挙げられる。その結果、CO2排出量全体は基準年度比95.4%と6%をわずかに下回っている状況にある。(表1-1、ページ1-4)
  • しかし、今後のCO2排出原単位については、2011年3月に起きた福島原子力発電所事故により、電力において化石燃料への依存度が高まることも予想され、その動向を見守っていく必要がある。(ページ1-62)
  • 500床以上の病院は、病院数で3.4%に止まっている一方、エネルギー消費量及びCO2排出量においては、各々21.4%、21.3%と、全体の約1/5も占めている上、前年度より病院全体に占めるシェアが増加している。このため、こうした大規模の病院の地球温暖化対策における責務は一層大きいものと考えられる。(図3-8、ページ1-32)
  • このように、医療団体をあげて地球温暖化対策に取り組んでいる中、国においてはかなり唐突に、温室効果ガスを2020年まで25%削減する中期目標の設定や、地球温暖化対策税の創設、及び国内排出量取引制度の創設等を骨子とする「地球温暖化対策の基本法案」を国会に提出した。(ページ1-50)
  • これまで進められてきた基本法案の策定プロセスや、その法案の内容については、必ずしも十分国民に理解されているものとは言えないため、国民の命を預かる医療の立場から基本法案に関し、今後とも「策定プロセス」、「国内排出量取引制度や地球温暖化対策税」、及び「中期目標」を中心とした各種要望をするものである。(ページ1-50)
  • 又、これまで国(経済産業省所管)が進めている「国内クレジット(CDM)制度」については、この制度を活用する医療機関は本自主行動計画に参加しない旨の表明を求められるという、本計画推進との関係で大きな矛盾を持っており、現行制度の残り期間が少ないとはいえ、今後早急な改善が求められるものである。(ページ1-55)
  • 2011年3月11日(金)午後2時46分、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生した。
    アンケート実態調査に回答した病院の内、東日本大震災の被災にあった病院は全体の14.2%であった。(表9-1)これを電力管内別にみると、東北電力管内では全体の55.8%が被災したのに対し、東京電力管内では34.1%という被災の状況であった。(表9-2、ページ1-57)
  • 二つの電力管内では原子力発電所を中心とした電力供給能力が低下したため、震災直後停電したり、3月14〜28日にかけて計画停電がなされた。
    「震災により2日間以上停電した」病院は全体の7.4%で、「計画停電した」病院は10.5%であった。(表9-3)これを電力管内別にみると、東北電力管内においては、「震災により2日間以上停電した」病院は48.3%にのぼり、「計画停電した」病院は2.7%であった。(表9-4、マルチアンサー、ページ1-58)
    一方、東京電力管内においては、「震災により2日間以上停電した」病院は8.9%であったが、「計画停電した」病院は43.0%にものぼった。
  • 東日本大震災の特徴は、巨大地震・巨大津波によって東京電力福島第一・第二原子力発電所等、原子力発電所において災害が発生したことである。
    原子力発電所に対する今後の対応について、「段階的に減らすべき」が58.1%と最も多く、これに次いで「現状にとどめるべき」が24.7%であった。その一方、「やめるべき」は8.1%で、「増やすほうがよい」は0.9%に止まった。(表9-6、ページ1-59)
  • 今後のエネルギー確保への対応の仕方については、「節電行動推進」が最も多く64.4%であったが、これに次いで「自然エネルギーの積極的活用」が53.5%にのぼった。そしてこれらに次いで「省エネ推進」が45.8%にのぼる一方、「既存方式拡大」は29.3%に止まっている。(表9-8、マルチアンサー、ページ1-60)

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