ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 272 2012-12-11

これまでの構造改革を振り返って
− 医療の営利産業化の視点から −

 

  • 小泉構造改革は、需要、消費の創出を目指した。小泉構造改革を通じて「いざなみ景気」がもたらされたが、それは外需主導の経済成長であり、国内消費は伸びず、給与は抑制されつづけた。
  • 小泉構造改革はまた、聖域なき歳出削減を掲げ、社会保障費を年2,200億円機械的に削減した。医療崩壊が現実化した一方、いってみれば「混合介護」で営利産業である介護サービス、がん保険などが伸び、また家計消費が落ち込む中でいわゆる健康食品などの支出は減っていない。
  • 2009年9月に政権が交代したが、その後も医療の営利産業化を進めようとする動きは不変である。最近では「日本再生戦略」や「社会保障制度改革推進法が、混合診療全面解禁、株式会社の参入を示唆する方針を打ち出している。
  • 医療の営利産業化の背景には米国からの要望がある。小泉構造改革下の2001年、米国は日本の公的医療保険制度に市場競争原理を導入することを強く求めた。米国の要望はその後さらに具体化した。TPPでは、日本の公的医療保険は対象にならないとの見方もあるが、米国はTPP 各国の医薬品市場に参入するため規制改革を求めている。
  • 小泉構造改革を通じて、国民の生活が豊かになったとも、国民の生活が幸せになったともいえないように思われる。今からでも、これまでの構造改革をあらためて検証し、総括をすることは、今後の社会保障のあり方を方向付けるために価値のあることではないだろうか。

※2013年01月02日 以下の修正を行いました。
 (誤)2頁 2012年12月→2001年12月

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