ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 279 2013-04-01

在宅医療についての郡市区医師会 アンケート調査結果

 

  • 在宅医療の現状について、郡市区医師会815 医師会を対象としてアンケート調査を実施した。回答率は78.2%である。
  • 在宅医療を進める地域の大きさについて
      在宅医療を進める地域の人口、広さを質問したところ、現在の郡市区医師会管下の人口等によって、さまざまな回答があった。
      現在の人口が20 万人以上の郡市区医師会では、在宅医療が進んでいるところ、多職種ネットワークを構築しているところが多く、約半数の医師会には在宅医療専門の診療所もある。人口20 万人以上の地域では、在宅医療の推進を後押しするための一定の医療資源、介護資源が整備されているものと推察される。また地域包括ケアシステムでは、人口1 万人程度の中学校区をひとつの単位として想定している。
      しかし、郡市区医師会の中には人口のきわめて少ない地域があるなど、地域の実情はさまざまである。そうした地域が、限られた医療資源、介護資源の下で在宅医療を進めていけるような支援が課題である。
  • 在宅医療推進のための成功の鍵
      今回のアンケート調査から浮かびあがったキーワードは、「多職種ネットワーク」であった。関係者を巻き込むことが成功への第一歩のようである。ネットワークというと難しい印象もあるが、自由記述欄には、とにかく顔の見える関係を築くことが重要であり、懇親会も有効であるなどの意見があった。小規模の医師会からは、あまり厳密な決まりごとを設けないことがポイントだとの意見もあった。できることから始めることも、成功への近道かもしれない。
  • 在宅医療推進のための課題
      最大の課題は在宅医療を担う医師の確保である。郡市区医師会では、在宅医療を行う医師の研修を積極的に行っているが、リーダーが不在であったり、必ずしも医師の関心が高くなかったりするところもある。県行政が人材育成研修を行っているところもあり、そうした事例を参考に、在宅医療の担う医師(認知症専門医、がん専門医なども含めて)の養成を進める必要がある。そのためには、合理的なインセンティブも必要であると考える。
      後方支援病床の確保も重要な課題である。急性増悪時の受け皿、レスパイト入院先、あるいは高齢化が進み、いわゆる老々介護が多くなっている地域では看取りの場として、一定の病床がなければ、患者、患者家族は安心して在宅医療を受けることはできない。またその必要性は地域の事情によって異なるので(有床診療所の有無、患者家族の構成など)、柔軟に対応できる余地を残すべきである。

※自由記述部分が欠落しておりましたので、4月2日追加しました

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