ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 291 2013-07-30

院外処方の評価に関する研究
—医薬分業元年から約40年を経た調剤報酬の妥当性についての考察—

 

  • 日本における医薬分業は、西洋医学の流入とともに、江戸末期・明治初期からはじまった。
  • 医薬分業政策によって、院外処方が増加している。処方総数に占める院外処方の割合(院外処方率)は平成23年度で約65%である。調剤薬局を取り巻く環境は時代とともに変化している。
  • 日本薬剤師会によって昭和49年(1974年)は「分業元年」とされているが、院外処方の増加が顕著な伸びをみせるのは、1990年代以降である。院外処方への誘導は、診療報酬および薬価差益の縮小によって行われてきた。
  • 院外処方の増加に伴い、調剤薬局一施設あたりの処方せん受付枚数を増加させている。同時に、調剤薬局のチェーン展開が顕著である。これらによって、規模の経済が働き、調剤薬局の高利潤化をまねいている可能性がある。つまり、院外処方が少なかった時代においては、調剤薬局の経営のために、一回の調剤に対して、ある程度高い点数が必要であったことは推測できるが、院外処方が増加した現在、調剤報酬の妥当性を考える必要がある。
  • 調剤報酬の妥当性を検討するためには、調剤サービスの価格である診療報酬と調剤報酬の推移を把握する必要があった。しかしながら、診療報酬と調剤報酬の点数を時系列で比較する研究は、これまで行われていない。そのため、本研究では、診療報酬の調剤部分と調剤報酬との点数の比較を行い、医療機関と調剤薬局との点数の差が、歴史的に存在してきたことを明らかにした。このことは、調剤報酬の妥当性を検討するにあたり、重要な意味を持つものである。
  • 研究方法は、単に点数表の比較では調剤サービスの価格としての把握が困難なため、現実的と考えられる前提条件を置いたうえで、その変遷を確認した。その結果、調剤報酬は歴史的に高い価格が設定されてきたことが明らかになった。
  • 今後引き続き、調剤報酬の妥当性についての検討を行う必要がある。

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