ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 296 2013-10-03

介護保険下における営利企業の現状と課題
−大手企業の最近の決算等を踏まえて−

 

  • 大手介護サービス企業の売上高の伸びは、公的介護費用の伸びを上回っている。保険外市場が拡大しているだけでなく、保険内の需要の掘り起こしも進んでいるものと推察される。
  • 居宅介護サービスでは、ますます営利企業の参入が進んでいる。広義の医療である訪問看護も、提供者が医療機関から営利企業にシフトしている。またケアプランを作成する居宅介護支援事業所でも営利企業が増加しており、自社の介護サービスを優先的にケアプランに採り入れていくのではないかと懸念される。
  • 施設介護サービスでも、営利企業が参入している有料老人ホームやサ高住が増加している。
  • 営利企業では不正事案がより多く発生している。また不採算事業や不採算地域から比較的容易に撤退しているようである。
  • 大手介護サービス企業の売上高・収益性は堅調に推移している。もちろん企業努力もある。利益の一部は配当に回る。他方、医療には株式会社は原則参入しておらず、利益は地域医療のための再投資に向けられる。
  • 営利企業が営利を追求するのは当然であり、多くの企業は経営努力をし、利用者に貢献している。しかし一部の企業に行き過ぎた行動も見られる。介護サービス企業の収入源の大半は公的介護保険であり、一部の営利企業の行動が公的介護保険の信頼性を揺るがしたり、持続可能性を危うくしたりすることが懸念される。監視を強化することはもちろん、事業報告の内容を保険内・保険外に区別してわかりやすく提示することも必要ではないだろうか。
  • 一方、医療機関は非営利ということもあって、高いモラルを維持しているのではないかと考えられる。これまで以上に医療機関が介護サービスに参入あるいは関与できるような適正な財源と施策も必要である。

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