ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 299 2013-10-23

保険外併用療養の現状について
−いわゆる「混合診療」の解禁を取り巻く動き−

 

  • 2004 年、いわゆる混合診療問題について、当時の担当大臣が基本的合意に至った。これは、必要かつ適切な医療は保険診療により確保するという理念を基本に据えたもので、これを踏まえて2006 年に保険外併用療養の仕組みが創設された。
  • 規制改革推進派は、かねて混合診療の全面解禁を求めてきた。最近は「混合診療の全面解禁」という直接的な表現ではなく、「保険外併用療養の拡大」と言っているが、保険外併用療養の拡大が保険収載に結びつかなければ、混合診療全面解禁そのものである。
  • 規制改革会議は、遠隔診療の設備コストについて保険収載を前提としない選定療養にしてはどうかという提案をしている。同じ時期、産業競争力会議では、国家戦略特区について、その目的は日本経済を成長軌道に載せることであり、「成長志向型の地方モデル」構築のために、地方の医療・教育環境に関し、遠隔医療や遠隔教育の実現を図るべきという主張もあった。ここでは、遠隔診療は患者ニーズというよりも、経済成長につながるものとしてとらえているように見受けられる。
  • 保険収載を前提に保険外併用療養が拡大して、国民が有効かつ安全な抗がん剤等を迅速に使用できること、先進医療を受ける機会が拡大することは望ましい。一方、経済成長だけを考えれば、先進医療等を公的保険外の自由価格市場に止め置いたほうが良いかもしれない。保険外併用療養である自由価格市場は、多くの企業さらには大都市の一部の大病院にとって魅力的であり、そのパイが広がれば国の経済成長に貢献する可能性もある。しかし保険外併用療養で止めることは、混合診療の全面解禁にほかならない。保険外併用療養の仕組みが導入された際の基本理念は「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことであった。この基本理念をうやむやにして良いわけではないだろう。
  • これまでのところ、安全性・有効性が確認された先進医療等はほぼ適切に保険収載されてきたと考える。保険収載にむけてのさらなる迅速な評価等については国としても取り組んでいる。今後も「保険外併用療養拡大」は保険収載を目指したものであってほしいと考える。

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