ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 300 2013-10-23

2012 年度診療報酬改定後の医療費の分析
−長期処方による診療所の外来受診日数減少と中小病院の現状などー

 

  • 厚生労働省「概算医療費データベース」等を活用して、2012 年度の医療保険医療費を診療報酬改定率と対比して分析した。
  • 2012 年度診療報酬改定は、入院、入院外の区分はなく医科全体で+1.55%であったが、医療費の伸びは入院+2.5%、入院外+1.0%と差が開いた。また最近では、診療報酬改定があるたびに入院医療費の伸びが、入院外を上回っている。
  • 大病院では平均在院日数を短縮したことにより総日数が減少したものの、1 日当たり入院医療費が上昇し、かつ患者数も増加して入院医療費が増加した。1 日当たり入院外医療費も上昇している。
  • 中小病院は、入院患者数の伸びが見られず、1 日当たり入院医療費もあまり上昇していない。特に2012 年度は100〜199 床の1 日当たり入院医療費が伸びていない。中小病院は診療報酬単価の高い7 対1 を算定しているところも少ない。立地的な条件から、より高い入院基本料等を確保しようとしても看護職員配置などの体制が整わないのではないかと推察される。しかしながら、最近の診療報酬改定では、大規模急性期病院で平均在院日数を短縮化でき、より高い看護配置ができることが評価される傾向にあり、地域で幅広い機能を担っている中小病院への評価はやや薄い結果になっている。
  • 診療所の入院外は、1 日当たり医療費がほとんど上昇しなかったうえ、1 件当たり日数が減少して、医療費がほとんど伸びなかった。2012 年度は、在宅医療を中心に診療所の外来を評価する診療報酬改定も行われたが、診療所全体の医療費を押し上げるにはいたらなかった。1 件当たり日数が減少しているひとつの要因は長期処方である。長期処方については服薬を忘れて病状が改善しないこと、処方期間中に急性増悪すること等の問題点が報告されている。これらの問題は、さらなる高齢化や認知症患者の増加によって、より深刻になるのではないかと推察される。長期処方のあり方を見直すべき時期に来ているのではないかと考える。

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