ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 305 2013-11-26

医療費の伸びと診療報酬の関係についての考察
−再診料と調剤技術料を中心に−

 

  • 薬局では2008 年度に調剤基本料が引き下げられたが後発医薬品調剤体制加算が創設され、多くの薬局がこれを算定することができた。また2012 年度に薬剤服用歴指導管理料の要件がきびしくなったが、ほとんどのところでクリアできた。このように調剤基本料の引き下げをカバーして創設された調剤報酬、さらにその後改定された調剤報酬は多くの薬局で算定できるものであった。一方、診療所では2010 年度に再診料が引き下げられたが、そのときに創設された地域医療貢献加算は算定できたところのほうが少なかった。2012 年度には一般名処方加算が創設されたが、これは院外処方だけが対象である。
  • 薬局の後発医薬品調剤体制加算は後発医薬品の調剤割合に対する加算、基準調剤体制加算は備蓄品目数等に対する加算であり、数量(Quantity)に対する評価である。そして、より数量が大きい場合を高く評価する改定が行われてきた。多くの薬局がその改定に対応しているが、大規模チェーン薬局等で比較的容易にクリアできている可能性もある。
  • 診療所では、再診料が引き下げられた2010 年度に創設された地域医療貢献加算は、休日・夜間に患者からの問い合わせや受診等に対応可能な体制を求めており、質(Quality)への評価であった。2012 年度に地域医療貢献加算から名称が変更され要件も見直された時間外対応加算では、すべて自院で「24 時間対応」する必要がない点数も設定されたが、診療負担増は小さくなかった。
  • 薬局の後発医薬品調剤体制加算は推計600 億円近くである。財務省は2007 年に後発医薬品のある先発医薬品がすべて後発医薬品に振り替えられた場合の効果は約1.3 兆円という試算を示している 。最近では2013 年に厚生労働省が後発医薬品の使用促進による医療費削減効果目標を約1.0 兆円と置いている 。このために調剤報酬上で600 億円の評価をすることが適正なのかどうかという議論も必要である。
  • 院外処方は、院内処方に比べて患者負担は3 割程度(あるいはそれ以上)高くなることがある。特に薬剤にかかわる情報提供料は、薬局では病院・診療所に比べてかなり高い。薬局の情報提供料に係る費用をはじめ、院内処方、院外処方のあり方も引き続き検討すべき重要課題のひとつであろう。

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