ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 303 2014-01-14

TKC医業経営指標に基づく経営動態分析
−2012 年4 月〜2013 年3 月期決算−

 

  • TKC医業経営指標からみる2012年度における民間医療機関の経常利益率は、病院(中小規模を中心とした法人)においては低下し、有床診療所では法人、個人とも横ばい、無床診療所(法人)もほぼ横ばいで、無床診療所(個人)のみやや改善が見られた。
  • 病院(中小規模を中心とした民間病院)は、保険診療収益が0.9%の微増にとどまり、経常利益率は低下した。
    診療科系統別にみても、保険診療収益は、内科系病院が+0.3%、精神科病院が+0.5%に止まり、ほぼ横ばいであった。法人の経常利益率は、客体数の少ない産婦人科系を除き、改善したカテゴリはなかった。
    病院の利益率が低下した主な要因は、従事者給与等の上昇であった。
    民間の中小病院に対して、マンパワーの確保や処遇の改善に係る人件費の上昇に見合うだけの財源配分が十分に行われていないことを示している。
  • 有床診療所は、医業収益が1.2%伸びたものの、従事者給与費等の上昇が要因となって医業利益率は若干低下した。経常利益率は、法人、個人とも横ばいであった。
    診療科別にみると、内科、外科、血液透析科において、保険診療収益の前年比がマイナスとなった。外科は、経常利益率が、法人、個人ともに、最も低かった。
  • 無床診療所(院内処方・院外処方計)は、医業収益が2.1%上昇した。経常利益率は、法人はほぼ横ばい、個人は1.3ポイント上昇であった。
    診療科別では、小児科と精神科は、保険診療収益の前年比がマイナスであった。法人の経常利益率が5%に満たない診療科が、産婦人科、精神科、耳鼻咽喉科の3科あった。これらは損益分岐点比率も非常に高い。
    院内処方と院外処方の別にみると、院内処方の無床診療所においては、保険診療収益が前年比マイナスとなった診療科が多くみられた。法人の経常利益率は、精神科は赤字、外科と耳鼻咽喉科も2〜3%の低い水準であった。
    院外処方の無床診療所のなかでは、精神科、皮膚科、外科の医業収益の伸びが小さく(2%未満)、法人の経常利益率は、産婦人科、耳鼻咽喉科が5%未満であり、精神科、皮膚科も5.5%以下に低下した。

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