ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 308 2014-04-02

災害時の在宅医療のあり方
-計画停電に関する調査結果を踏まえて-

 

本稿の目的は、東日本大震災後の計画停電がもたらした在宅医療への影響を明らかにし、停電の際に電源を必要とする医療機器を使用する在宅患者や家族をどのように地域で支えていくべきか、在宅医療における医療安全のあり方について検討するための基礎資料に資するためである。
東日本大震災による原発事故により東京電力管内で実施された計画停電対象地域の在宅医療を行う診療所を対象に行ったアンケート調査「計画停電時における在宅医療への影響に関する調査(有効回答数512施設、有効回答率35.2%)」から、以下の4点が明らかになった。
①患者や家族への影響として、「患者や家族の停電に対する不安の増大」の回答が半数近くを占め、計画停電が在宅患者や家族の心身に大きな負担となっていた。
②訪問診療に何らかの影響があったと回答した診療所(n=220)のうち、「在宅医療機器の予備バッテリー、酸素ボンベ等の手配の発生」が55.9%、「医療機器メーカーに、機器等の要請」が47.3%、「事前の在宅医療機器への指導管理の増加」が35.5%などの順であった。外来・入院では、診療時間の短縮や休診をせざるを得ない状況などの回答が多く、診療所においても電源を失うことで診療全般に大きく影響していた。
③電力不安による入院の手配を行ったと回答したのは、人工呼吸器を使用する在宅患者がいる診療所のうち17.4%、酸素濃縮器を使用する患者がいる診療所のうち7.9%であった。
④「自院の対策」として最も多かったのは自家発電機、太陽光発電の導入に踏み切ったという回答が多かった一方で、小規模な診療所(個人)では導入困難であるという意見が複数みられた。また、「行政や医師会等の連携」については、患者情報の共有や、連携による対応、災害時の拠点づくりなど、行政や関係団体との連携した仕組作りが要望されていることもわかった。

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