ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 313 2014-04-08

医学部定員増員後の医師数の見通し
−成長戦略と医療関係職種への業務移転も踏まえて−

 

  • 医学部新設により医師養成数を増加しようとする動きがある。しかし、歯学部、薬学部の例を見ると、いったん増員された入学定員の削減がきわめて困難であることが明らかである。
  • 医師養成数は、2008年に本格的にその増加に舵を切った(それまでは暫定的な増加)。国は医療提供体制の改革を行う方針を示しており、その前提で国が推計している必要医師数は、これまでの医学部定員増により充足する。
  • 今後は、必ずしも医学部定員増を継続する必要がなくなるかもしれない。成長戦略の下、医療周辺産業の成長が期待されており、セルフメディケーションが推進されている。これらの是非は別として、この結果、医師の業務範囲が縮小し、医療関係職種、さらには営利市場に業務が移転する可能性があるからである。
  • 薬剤師や、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士数はそれぞれかなり増加している。医療関係職種を確保できないため診療報酬上の要件をクリアできない医療機関もあるが、医師と同様、全体としては充足しており、偏在が深刻なのではないかと考えられる。このまま医療関係職種の増加がつづけば、その雇用を支えるために公的医療保険外の市場を開拓する必要に迫られ、その面からも医師の業務範囲が縮小する可能性もある。
  • どこまでを医師の業務範囲にするかどうかについては、「『必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する』という国民皆保険制度の理念」(2004年12月 「いわゆる『混合診療』問題に係る基本的合意」)がひとつの拠り所となるだろう。また公的医療保険においては安全性の確保がより重要であり、医師の指示の下での業務分担を堅持すべきと考える。

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