ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 311 2014-04-08

都道府県医師会等のドクターバンク事業の現状と課題
医師確保に向けた職業紹介事業の在り方の検討

 

  • 規制緩和により、大学医局の医師派遣と医師確保を目的とした無料の職業紹介事業のほかに、有料の職業紹介事業が参入している。有料の職業紹介事業者の問題点があるものの、無料の職業紹介事業、有料の職業紹介事業ともに、医師の登録・マッチング状況や、有料職業紹介事業者が医療機関から徴収する手数料を含む詳しい実態はよくわかっていない。
  • 都道府県および都道府県医師会がかかわる無料のドクターバンク事業の実態を把握するため、都道府県医師会を対象にしたアンケート調査を実施した。
  • その結果、全国の都道府県でドクターバンク事業を実施しているのは36都道府県で、都道府県医師会の単独運営は7件であった。
  • 医師登録・マッチング状況については、40代の求職者が最も多く、50代、60代の求職者も合計で全体の半数近くに上っていることから、シニアドクターのキャリアパスの構築の必要性も示唆された。
  • 都道府県医師会間での連携策も、九州地方の都道府県医師会で講じられており、今後の活用が期待される。
  • 女性医師支援など医師の支援策を講じている都道府県医師会は19医師会であった。具体的には、女性医師バンクが5割、女性医師の復職支援プログラムの開発・提供が4割近く、定年後の医師の再就職支援が3割であった。
  • 現状のドクターバンク事業の評価をめぐっては、効果は不十分・殆ど無いとの回答が4割を占めたが、事業の拡大は必要と考えている都道府県医師会が7割を占めたことから、事業を充実させる必要性が示唆された。その方法として、日本医師会が中央センターとなり都道府県医師会の事業を統括すること、都道府県医師会が全国的に連携することなどが望ましいとの意見が目立った。
  • 今後のドクターバンク事業の在り方として、主に次の5点を提案する。
    第一に、地域のニーズを把握した上で、需要と供給のバランスを考慮した事業体制を前提に、必要な医師を確保すること、医師の質を担保するという2つの目標を明確に打ち出すことである。
  • 第二に、日本医師会運営の女性医師バンクの活用、僻地・離島への医師派遣制度の検討、日医マッチング制度の創設、定年退職もしくは代を譲った医師の活用に取り組むことである。
  • 第三に、戦略の位置づけとして、マッチング機能を強化して理想的なマッチングを実現するため、現状の非強制的な配置と、強制的な配置の双方を活用しつつ、医師と医療機関の双方にメリットがあるようマッチングを進めることがある。
  • 第四に、戦略の方向性として、国の地域医療支援センター内で都道府県医師会、行政、大学を中心に、有料職業紹介事業者などと連携して地域のニーズを把握したうえでの医師登録・マッチングを進めることがある。
  • 第五に、今後の検討課題として、当該地域でカギとなるステークホルダーが連携すること、都市部への医師流出を生じさせぬような全国的な医師確保策に取り組むこと、医師の人生・生活を踏まえたうえでの緩やかな配置規制の是非について検討することなどが挙げられる。

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