ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 326 2014-10-16

国の借金と公的医療・介護保険財政

 

  • 現在の債務残高を形成した要因は、最近の社会保障費の増加に加え、地方交付税交付金、過去の大型公共投資、財投債や外国為替証券の発行などさまざまであり、国の全体的な歳出改革は引き続き重要である。
  • 歳出の中で、最近の社会保障費の増加は日本の財政にとって大きな負担になっていることも事実である。医療・介護提供体制の改革と成長戦略が実現すれば、公的医療・介護保険の持続可能性が高まることは、今回の粗い試算からも見えてきた。ただ、医療・介護提供体制の改革と成長戦略はいずれもハードルの高い課題である。
  • 医療・介護提供体制の改革については、地域医療構想(ビジョン)策定にむけての取り組みが始まっているところであり、これは地域の実情に沿った実効性の高いものにしていかなければならない。
  • 成長戦略では、公的医療・介護保険の公費負担の低減と公的保険の周辺産業の創出を目指している。公的給付範囲の縮小につながらないこと、医療・介護本体を営利化しないこと等に注意しつつ、しかし経済の下支えとしての医療・介護周辺産業の成長も両立させる必要がある。
  • 医療・介護保険財政の健全化のためには、労働市場への参加の進展も不可欠である。医療、介護は雇用誘発効果が高い。医療、介護における処遇改善等のための財政的支援が、日本全体の雇用を下支えし、もって経済成長を実現する好循環につながることを期待したい。
  • 社会保障審議会医療保険部会では医療保険制度改革についての具体的な検討が始まっている。医療・介護保険財政については、保険料、公費負担、保険給付費(保険給付範囲を含む)のあり方が主要課題となりがちだが、保険者の一般管理費や保健事業費も支出全体の中で一定の割合を占めている。また正味財産をもつ保険者もある。本稿では試行的に連結損益計算書および貸借対照表を作成したが、ぜひ連結財務諸表をとりまとめ、医療・介護保険財政全体の見直しを進めてほしい。

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