リサーチレポート

リサーチレポートNo. 140 2024-11-06

二次医療圏の設定: 現状と将来に向けた見直し検討について
(秋田県の再編事例を参考に)

羽藤 倫子

 

ポイント  


◆第8次医療計画において国の見直し基準に該当する医療圏を有するのは33都道府県にのぼるが、第8次医療計画において二次医療圏の再編が行われたのは秋田県のみであった。  
◆全国330二次医療圏のうち、人口20万人未満の二次医療圏が約半数を占めるが、2040年頃にはさらに増加すると推計され、現在の二次医療圏のままであれば人口10万人未満の二次医療圏が100を超える。

◆2050年頃までの将来推計によれば人口規模の小さな医療圏ではさらに高齢化率が高くなる一方で、高齢者人口数はすでにピークを迎えている、あるいは2030年頃までにはピークを迎え終わり、その後は高齢者人口も減少傾向の一途と推計される。一方で、人口規模の大きな医療圏は今後人口の高齢化率が徐々に上がり、高齢者人口もしばらく増加傾向と推計されることから、二次医療圏間の人口構造の差はより拡大する。

◆二次医療圏間の人口規模の差は医療提供体制の違いにもつながる。
◆過疎地域型の二次医療圏の方が医師の平均年齢が高く、人口当たりの診療所医師数も少ない傾向にある。
◆二次医療圏設定の議論は各自治体が「地域完結型医療」をどのように定義づけし、実践していくかを明確にすることに他ならない。
◆秋田県は、全国で最も人口減少・少子高齢化が進んでいるという背景に加え、コロナウイルス感染症を通じて地域医療の維持が困難となっていく将来に対する危機感が自治体や医療提供者、住民、関係団体など各ステークホルダー間で共有された結果、第8次医療計画では二次医療圏の再編を選択することとなった。
◆二次医療圏の再編議論に際しては、日ごろから行政や大学病院、医師会間などステークホルダー間での良好な関係が築かれていることに加え、行政の主体的な関与と住民との対話や交流を通して、地域医療への理解が得られていることが重要である。

 

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