リサーチレポート

リサーチレポートNo. 132 2022-08-18

地理情報システム(GIS)による医療アクセスの分析:
滋賀県における産科医療・小児科医療へのアクセシビリティ

清水 麻生

坂口 一樹

森 宏一郎

 

  • 本稿は、前回実施した滋賀県における医療へのアクセシビリティ分析(日医総研ワーキングペーパー457)の追加分析である。これまで地域の医療資源へのアクセシビリティ(≒地理的なアクセスのしやすさ)を地図上に可視化することを目的として、地理情報システム(GIS)を活用し、都道府県別に分析・評価する調査研究を進めてきた。
  • 今回は、滋賀県庁や滋賀県医師会から頂いた助言と最新の医療機関データを元に、現在(2020年)及び将来(2035年)における産科医療・小児科医療へのアクセシビリティを分析・評価し、可視化したマップを作成した。
  • 産科医療の分析結果では、①現状、県内に産科医療にアクセス困難な地域が存在することに加えて、②将来、診療所の承継問題の顕在化をシミュレーションすると、人口が減るにもかかわらず、人口当たりのアクセシビリティが低下する地域が広範囲にわたることが明らかになった。
  • 小児科医療の分析結果では、①現在、県全域で小児科医療へのアクセシビリティが確保されていること、②将来、医業承継問題が顕在化すると、人口が減少するにも関わらず、人口当たりのアクセシビリティが低下すると予測されることが分かった。
  • 産科・小児科医療へのアクセスは、地域に若い世代を呼び込み、地域経済を活性化し、地域社会を維持していくために必要である。医療機関の集約化と社会インフラとしての医療へのアクセス確保のバランスをどう取るか、承継問題の顕在化による医療アクセスの悪化にどう対処するかの2つの課題がある。

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