リサーチレポート

リサーチレポートNo. 127 2022-06-07

新型コロナウイルス感染症対策に係る宿泊療養施設に関する調査
―第5波における宿泊療養施設の実態―

清水 麻生

 

  • 宿泊療養施設の運営に関しては、地域の実情に合わせて運営されているため、全国的に宿泊療養施設で実施されていたことや施設に従事していた看護職の雇用人数や賃金等に関する定量的なデータが明らかにされていない。
  • そこで、本稿では、47都道府県医師会を対象に、新型コロナウイルス感染症第5波(2021年6月~9月)における宿泊療養施設の実態および施設に勤務していた看護職の雇用に関するアンケート調査の結果をまとめ、考察を行った。
  • 第5波では、宿泊療養施設の需要と供給のピークの時期がマッチしていない都道府県があり、宿泊療養が必要な陽性者が自宅療養せざるを得ない状況にあった可能性がある。さらに、各都道府県で宿泊療養施設が増設されたが、稼働率はそこまで高くなかった。
  • 宿泊療養施設における医療体制として、医師は往診やオンライン診療の他に、オンコールや電話診療等を活用して24時間体制で対応していた都道府県が散見された。また、宿泊療養施設で陽性者が重症化した場合の対応に関しては、8割以上の都道府県が肯定的に評価していた。
  • 宿泊療養施設で従事していた看護職の雇用に関して、7%の都道府県では都道府県庁の担当部署が雇用の管理を行い、7割以上の都道府県が都道府県看護協会(ナースセンターを含む)と民間職業紹介事業所を介して募集していた。
  • 看護職の給与に関して、半数以上の都道府県では、看護職の日勤帯の1時間あたりの給与額が2,501円以上であった。
  • 第5波では、急速に拡大する感染に合わせていかに早く多くの宿泊療養施設を開設できるか、という点で様々な課題が発生していた。
  • 看護職の雇用の課題としては、①看護職を効率的に確保すること、②一定水準のスキルをもった看護職を確保すること、③看護職の雇用管理を効率よく実施できる体制を構築すること、が挙げられる。
  • 療養者を支援する医療従事者や医療資源に限りがある中、「宿泊療養」を今後の感染症対策においてどのように活用していくのか、再度検討する必要がある。

本文

別添資料1 調査票

別添資料2 単純集計表