リサーチレポート
リサーチレポートNo. 125 2022-04-25
大学病院の現状について
-2020年度決算および新型コロナウイルス感染症への対応-
- 大学病院は、運営費交付金および私学助成金が抑制される中、自己収入の増収を迫られ、診療報酬財源を巡って市中民間病院と競合している。
- 大学の学部はともかく、大学病院では寄附金などの外部資金の調達は容易ではなく、自由診療や敷地内薬局への不動産の賃貸など、事業の多角化によって新たな財源の確保を探っている。
- このような動きが、大学病院に本来求められる教育や高度の医療の提供といった役割を弱めているのではないかと懸念される。
- 新型コロナウイルス感染症対応の病床確保ついては、当該地域の感染者の発生状況や都道府県からの要請如何にもよるが、大学病院によってかなりの濃淡がある。
- 近年では大学病院がさらに巨大化したり、地域医療連携推進法人を設立したりしている。民間病院では、大学病院の傘下に入らないと孤立するのではないか、あるいは働き方改革に絡めていえば、医師の派遣を受けられなくなるのではないかという不安を募らせているのではないかと推察される。
- 大学病院が本来果たすべき教育や高度の医療の提供は、日本の国力である。また本来の役割に集中することで、新型コロナウイルス感染症のような有事にも備えることができる。そのために、大学病院をサービスの対価である診療報酬とは別の財源で支えることを、あらためて検討してはどうだろうか。
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