リサーチレポート

リサーチレポートNo. 123 2022-03-08

民間一般病院の経営概況 「第23回医療経済実態調査報告-令和3年実施-」からの集計

前田由美子

 

1.中医協の「医療経済実態調査」は、診療報酬改定の影響を捕捉するため、一般に病院については、介護収益がほとんどない医療機関を対象に分析が行われる。しかし介護収益が一定程度ある医療機関のデータも収集されていることから、本稿では、データ全体を活用し、民間(医療法人)一般病院の損益状況を介護収益の有無別等に区分して、それぞれの特徴を分析した。

 

2.民間一般病院のうち、① 急性期型の病院、② ケアミクス型の病院、③ 療養病床主体の病院が、約3分の1ずつ存在する。特に療養病床は、国公立・公的病院の参入が少なく、民間病院が担っている機能である。

 

3.「急性期型」は、コロナ前から損益差額率の水準が相対的に低い。また、外部支出(医薬品費、設備費等)の割合が高く、他産業の賃上げや物価上昇の影響を受けやすい。近年、人件費率も上昇している。外来収益の割合も高く、受診控えの影響も受ける。

 

4.「ケアミクス型」のうち介護事業を行っているところでは、病院病床のダウンサイジングによって自院の介護施設への退院患者が減少し、介護施設サービスの売上減少に影響しているのではないかと推察される。ただし今のところは、病床削減による稼働率の上昇が収益性の向上に寄与しているようである。

 

5.療養病床主体の病院も病床数を削減して収益性を維持しているが、労働集約型であり、職員の処遇改善による人件費の上昇が利益率の低下に直結しやすい。

 

6.「医療経済実態調査」自体は、診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的としているが、今後も多角的な活用を検討したい。

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