リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 64 2018-02-07

医療機関経営と銀行貸出の関係(マクロデータ分析)

 

  • 銀行経営は近年厳しくなっているが、マクロ的要因としては、産業構造の変化等に起因する「預貸率」の低下や、金融政策等の影響を受けた「利ザヤ」の縮小がある。「預貸率」の低下は、バブル崩壊後、企業が潤沢な手元資金を維持し、設備投資も内部留保の範囲で行い、借入を簡単には増やさなくなったことがある。また、貸出の「利ザヤ」はマイナス金利政策により一段と縮小しており、銀行の業績は悪化している。
  • 銀行が有力な貸出先として注力しているのが医療等である。医療等は地域を雇用面・経済面で支える中心的な事業体で、超高齢化が進む中、医療施設等の提供体制の整備・拡充が見込まれ、それに伴う貸出の増大が期待できる。加えて、アベノミクスで医療を成長分野とする政策も後押しとなっている。
  • 国内銀行の貸出残高の伸び率と診療報酬(本体)の改定率の推移を比較して見ると、継続的なプラス改定が医療機関等への貸出増加に貢献していることがわかる。
  • 診療報酬(本体)は医療機関経営を左右する重要な政策変数であり、銀行が診療報酬(本体)を医療機関経営に係るリスク指標としてモニターし、その動向を踏まえて、医療機関への貸出スタンスを調整していることが読み取れる。
  • 銀行が産業や地域へ「マネー」を供給し、医療機関を地域の中核的事業体として支えていくためにも、診療報酬(本体)がしっかり確保されていかなければならない。医療を政策的に成長分野として位置づけるのであれば、その点でも診療報酬(本体)の着実な積み上げが求められる。

ダウンロード  (約 1,011 KB)