リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 69 2019-03-07

民間保険会社の診断書作成にかかる医師の負担の実態:
研究会の評価と医師の負担の推計

 

  • 医師の働き方改革に関する検討会(厚生労働省)での論点整理において、保険会社が医療機関に要求する診断書の文書量の多さ等が医師の多忙に拍車をかけているとの問題提起がなされた。2018年に「民間保険会社が医療機関に求める診断書等の簡素化等に関する研究会」が開催され、診断書等作成業務の負担軽減について、医療界と保険業界関係者間で論議が行われた。
  • 研究会の結論として、医療機関側の負担軽減への配慮から、2018年度末を目途に、保険業界の「診断書様式作成にあたってのガイドライン」の改定を検討するとされたことは評価すべきと考える。今後も定期的に保険業界と医療界が話し合い、適宜見直しを行うことを期待したい。
  • 本稿では、さらに論議を深めていくため、日本全国で1年間に作成される診断書の枚数とその作成に要する時間の推計を行った。診断書作成枚数は年間約1000万通、作成所要時間を年間約500万時間と推計される。これにかかる作業量は、医師約3,000人分の年間労働に匹敵する。
  • 医療現場の電子化推進が抜本的対処策になるが、データセキュリティの確保とコスト低廉化が解決すべき主な課題である。

(平成31年4月1日修正・追記)

 

  • 本稿公表後、金融庁から同庁の見解に関する記載について申し入れがあり、協議の結果、本稿で「診断書様式の標準化に金融庁が慎重姿勢」としていたのをあらためた。
  • 具体的には、「第2章 研究会の評価-2.3 残された課題」の表題「(2)行政指導の一部見直し」を「(2)金融庁の支援によるPDCAサイクルの確立」とし、慎重姿勢の軟化を求めていたのを修正し、様式標準化に対する金融庁の今に至るまでの後押しを評価しつつ、ガイドライン改定の実効性担保のためPDCAサイクルが保険業界に確立するよう指導していただくことを求める内容とした。また併せて「第2章 研究会の評価-2.3 残された課題-(3)診断書作成にかかる医師の業務負担の定量的把握」の項に、公表データのない「医療機関から保険会社に提出する診断書枚数」を、保険業界で統計データを把握し公表するように金融庁から指導いただくことを求める旨、追記した。
  • 修正・追記前の該当箇所の記載文を、参考として本稿巻末に掲載した。

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