リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 70 2019-04-03

児童虐待への母子保健行政の対応 国と自治体の役割と実態

 

相次ぐ親から虐待を受けて子どもが死亡する事件などを受け、児童福祉法等の改正の議論が進められている。日本医師会では、児相に医師または保健師を配置するだけでは不十分で、児相の意思決定に日常的に医師が関与し、医学的知見に基づく対応ができるようにするために、医師の役割の明確化が必要であると見解を明らかにしている。増加を続ける虐待疑い事例に対応するには、地域の医療機関との連携強化を進めるべきである。翻って、母子保健の場においても、これまで児童虐待の予防と早期発見についてはさまざまに対応している。母子保健の場でまず挙げられるのが、健診の未受診である。妊婦健診、乳児健診、三歳児健診等の健診を受けていない場合に虐待のサインである場合が多いことが明らかとなっている。本編では、要保護児童対策地域協議会、基礎自治体、広域自治体、国の法的位置づけを概観したうえで、母子保健の現場における取組の現状と課題について、対応例の紹介を含めて整理した。医師、医療機関においては、医療および母子保健にかかわり、児童虐待対策に関する連携する一員として、与えられた権限と限界、そして、自治体側の責務と医師への期待を承知したうえで、通告、情報提供、医学的判断、指導を積極的に行われるよう期待する。

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