リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 86 2020-08-04

ラグビーワールドカップ2019における医療体制上の課題に関する調査
― 東京オリンピック・パラリンピック2020に向けて ―

 

  • ラグビーワールドカップ2019日本大会(RWC2019)の開催地であった26医師会を対象に大会期間中の医療体制上の課題等に関する検証調査を行った(回答:19医師会)。このうち、東京オリンピック・パラリンピック2020(オリパラ2020)の開催予定地である8医師会については、オリパラ2020への医師会の関与状況についても尋ねた。
  • RWC組織委員会や開催自治体等から、何らかの協力依頼を受けた医師会は約8割であった。依頼内容は「大会救護所への医師派遣」、「多数傷病者発生時の医療支援」が最も多かった。依頼を受けた医師会はおおむね全面的に協力を行った。
  • 大会期間中、観客用救護所に医師を派遣した医師会は42.1%(8医師会)で、派遣先は競技場外のみが6割以上であった。日当、交通費の支給が行われた医師会は75.0%で、支給元はいずれも開催自治体からが多かった。
  • 医師会への医療提供体制の情報提供について、開催自治体からは「積極的に十分であった」という回答は5割以上であったが、組織委員会からについては4割未満であった。大会への医師派遣の有無でみても、組織委員会から十分な情報提供があったとする割合はいずれも4割未満で変わらず、組織委員会との情報共有体制の構築の難しさがうかがわれた。
  • 大規模イベント医療・救護ガイドブックの作成、CBRNEテロ対策の研修会やマスギャザリングセミナーの開催、ワンストップ窓口の設置、SMSによる情報提供等、大会期間中の日本医師会の取り組みは、おおむね高評価を得、今後の取り組みの継続を望む声もみられた。
  • 大会に医療チームを派遣したり自身が参加することの不安については、「外国人対応」「組織委、自治体との関係」、「感染症対策」「マスギャザリングでの事故等」が挙がった。
  • 東京オリンピック・パラリンピック2020(オリパラ2020)の関与状況について回答があった5医師会のうち、4医師会はオリパラ2020開催に関する協議体(推進委員会、準備委員会など)に参加していた。
  • 組織委員会や開催自治体等からの協力依頼については5医師会全てが受けており、「大会救護所への医師派遣」が最も多かった。
  • 2020年2月中旬時点で、会場付近の救護所に医師を派遣することが決定・派遣予定の医師会は4医師会である。医療チームを派遣、もしくは自身が参加するにあたって不安や心配に感じることについては、人員体制の確保について意見が多く寄せられた。日本医師会への要望については、提供する医療に見合う対価を求める意見がみられた。
  • 今後の課題については、組織委員会や自治体との関係構築、より充実した研修プログラムの実施と継続、感染症対策や災害医療の受け入れ体制の整備等が挙げられた。

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