リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 91 2020-09-03

大手調剤薬局等の2019年度決算と
その後の状況(新型コロナウイルス感染症の影響)

 

  • 大手調剤薬局およびドラッグストア(本稿では上場大手企業が対象)は、M&Aや新規出店効果によって売上高を伸ばしている。特にドラッグストアがシェアを拡大する一方、大手のなかでもやや中堅の調剤薬局は、シェアを縮小させている。ドラッグストアは、調剤チェーンほどには「門前型」ではないので、過去の処方箋集中率を要件とした調剤報酬適正化の影響が小さかった経緯がある。
  • 本稿では一定規模の上場企業しか分析していないが、それだけで全国調剤医療費および薬局数のそれぞれ約2割を占める。実態としてはかなりの薬局がチェーン薬局の傘下にあるものと推察される。
  • すなわち、「門前」「チェーン薬局」をターゲットとした従来の調剤報酬適正化手法が通用しなくなっている。
  • なお、調剤専業とドラッグストアとで機能に差があるのか、今後の検討課題としたい。
  • 2020年4~6月には、新型コロナウイルス感染症流行下で受診控えが生じ、処方箋枚数が減少した半面、処方箋単価が上昇した。大手調剤薬局の営業利益率はプラスである。ドラッグストアの中には、店舗数の増加が主要因ではあるが、売上高が増加した企業もある。処方箋単価の上昇は長期処方が主要因であり、長期的には均されていくが、2020年度の調剤報酬プラス改定の効果や調剤料の点数設定も影響している。今後の動向を注視したい。

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