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資料・書籍・その他 2002-08-12

フランスレポート|フランス一般医報酬単価引き上げ成立とドイツ、
フランスのジェネリック薬剤政策

7ヶ月間続いていたフランス疾病金庫、政府、大手医師労組CSMFの三つ巴の交渉は、ついに、この6月5日、成立した。シラク大統領当選の返礼ともとれるフランソワ・マテイ新保健相介入での報酬上方改正により、一般医の診療報酬単価Cが、7月1日付けで20ユーロとなり、往診報酬単価Vが10月1日付けで30ユーロとなる。疾病金庫財政均衡を考えると、18.50ユーロ以上の値上げは不可能と、前ジョスパン政権は頑なに拒否を続け、医師労組は、大型ストライキ、ウィズアウト・ドクター・デイ、保険医協定解消、強いては地方警察との衝突にまで発展していた。疾病金庫にとっては、今回の改正で410ミリオン・ユーロの出費増となる。

 

この報酬改正に伴い、医師には三つの条件が提示された。

 

  1. 適正医療の遵守
  2. ジェネリック薬剤品量を全薬剤処方の25%以上とする。
  3. 患者への教育、啓蒙(無駄な往診はやめて来院する事、抗生物質が必要ない風邪の際は、その説明など)

 フランスではジェネリック後発薬品処方は、既に二年前より薬剤師に代替処方権を与える、薬局にマージンを多く与える等、手を尽くしたが、患者側、医師側の抵抗が強く、売上全体の2%に過ぎなかった。今回、処方者である医師にジェネリック処方の義務を課す事により、この数字を上げたい所である。
データ:クロード・ルペン

 お隣のドイツでは、1989年以来、ジェネリック薬剤処方政策を、奨めてきた。ことシュレーダー政権下のシュミット保健相は、医師の報酬支出と薬剤支出の二つを一組の枠で予算とする政策により、ジェネリック薬剤の売上を、40%までにした。2002年の医療費は、実に255ミリオン・ユーロの節約に成功したと、シュミット相は語る。更にフランスを真似て、ドイツの薬剤師にも代替処方権を与える法を通過させると語った。
 一方、一連の動きを歓迎しないであろうと思われた製薬会社も、臨機応変に対応し、サノフィ・サンテラボ社は、イレックス社、アヴェンティス社(旧ローヌ・プランク)は、RPGアヴェンティス社と、ジェネリック専門の子会社を造り、グループ全体での連結収益を上げる作戦に切り替えた。政府も、この代償に、研究開発費援助をすることにより、新薬開発分野も保護する事を約束した。
 調剤薬局団体には、売上の35%以上をジェネリック品に代替処方するように要求、その報酬として150フラン以下の薬品1箱につき26.1%のマージン、150フラン以上の薬品1箱には10%のマージンを与える取り決めを交わした。
 交渉成立の後の会見、医師労組側は、生涯教育への報酬、診療情報の電送手続き報酬の要求を控えている模様。一方、疾病金庫側、大手全国労組も今回の上方改正は、決して歓迎しておらず、適正医療、ジェネリック処方量が数字で成果を見せない場合には、今度こそなんらかの罰則を法制化させるとコメントした。