資料・書籍・その他

資料・書籍・その他 2002-07-25

フランスレポート|Vitaleカード

1999年より使用が開始された医療情報電子ICカード、Vitaleカードは、その普及徹底に問題が あり、事実上の使用開始、滑り出し走行をしたのは、極最近と言える。ここで、このヴィタル・カー ドに関する二つのトピックスをお伝えする。

 

ヴォ-ジュ県開業医グループ勝訴

 2001年1月に、ヴォ-ジュ県の開業医125名(最初34名、後に91名が加わる。)が地方疾病金庫と全国 疾病金庫を相手取り行った裁判で、この度、勝訴の判定を受けた。

 訴訟の内容は、ヴィタル・カード使用のボイコットを行った開業医(主に医師労組員)への措置を 目的として、疾病金庫は、地方紙(L’Est Republican, La Liberte de l’Est等)を介して、県民に医師 への報酬支払い拒否、ヴィタル・カード使用の要求を呼びかける広告を載せた。広告文には、「あな たの医師は、電信化を拒否しますか?このような時、あなたも、支払いを拒否してください。われわ れ疾病金庫は、既に医師に直接報酬を支払うことを約束しました。あなたを人質に取り交渉をする医師 には、電信化を強要しましょう。」とあった。この広告の文面が、屈辱的で、被保険者・医師にプレッ シャーをかける事を奨める性質のものであるとして、提訴した。事実、このキャンペーン中、患者から 中傷を浴びるケースも証言として報告された。政治的中立を保つ象徴的権威の医師会も、異例に、提訴 を支えた。
 医師側の勝訴により、疾病金庫は象徴的賠償金として、0.15ユーロ(提訴時の要求額が1フランであっ た為、ほぼ同額とする。)を原告に支払い、上述地方紙に、判定結果と訂正・謝罪文を載せる事となっ た。医師会にも、「人質」は不適切な発言であったとし、会への名誉毀損賠償として、0.15ユーロ支払 いと、同様新聞掲載を命じた。

 

医療費支払い大幅時間カット

 フランスでは、従来患者は、自己負担分、保険償還分も合わせた医療費全額を一旦、支払い、その後 各自が加入の健康保険に償還申請を行い、償還を受けるのを原則としていた。
最近、やっとフランスの開業メディカル職者(医師、リハビリ士、開業看護等)も、ヴィタル・カード の端末読み取り機器を購入し出した。(疾病金庫より、費用援助制度あり。)しかし、ヴィタル・カー ド読み取り器購入後も、診療報酬情報を完全にオンライン化することには躊躇いを見せる者も多く、 なんとも中途半端な様相も見られる。例えば、医療機関側のハード・インフラ努力差によって、ヴィタ ル・カード使用ができる場合、オンライン化が完全な医療機関(例:公立病院、規模の大きいクリニック など)では、患者が支払うのは自己負担分のみで済む。
 あるいは部分的にのみオンライン化が整備された医療機関(例:開業医、その他の開業コメディカル など)では、ヴィタル・カードを使用しても患者は医療費の全額を医療機関に支払わなければならない。 ただし、患者が保険償還に関する申請手続きを行わずに、自動的に保険償還を受けることができる。この 場合に支払いから償還までかかる時間の平均が、5.3日であった。対して、ヴィタル・カードを使用せず 従来の償還申請用紙を送る場合、医療費支払いから償還を受けるまでにかかる時間の平均は、37.9日で あった。この日数差の主な原因は、当然ながら、電子化による疾病金庫職員の人的作業のカットもさる ことながら、患者側が償還申請手続きペーパー・ワークを行うことが億劫な為、実質医療支払い日から 何日(平均25.5日)も放置してしまう人が多い事であった。疾病金庫側は、申請用紙を受け取ってから の処理時間平均は、12.4日間のみであるとしている。
 同金庫によれば、現時点で被保険者の61%が、自己負担分以外の医療費を疾病金庫と医療機関との間 で清算する方法を利用している。その場合、ヴィタル・カード完全使用のオンライン医療機関には、平 均6.4日で疾病金庫から医療費が支払われる。ヴィタル・カードを使用せず、従来の紙媒体でレセプト申 請を行う医療機関(日本の診療報酬支払い形態は、このケースに等しい。患者は自己負担分のみ支払う。) には、平均60.1日間で医療費が支払われている。後者の時間差も、前述同様、疾病金庫側の人的作業カッ トのみではなく、その45日間は、医療機関側のレセプト申請作業による時間であるとした。この結果、 電信化の魅力を医療者、患者にアピールした。