資料・書籍・その他

資料・書籍・その他 2002-03-19

フランスレポート|フランス新介護手当APA

APA

 2002年1月1日より新しい介護手当、APA(Allocation Personnalisee d’Autonomie) が PSD(Prestatopm Specifique Dependance)に代わって施行された。また、その対象者は80 万人に拡大された。ここに、エリザベス・ギグー雇用連帯相のインタビューから抜粋紹 介する。

 

新介護手当APAとは?

 APAはPSDに取って代わるフランスの新しい介護手当てのことです。APAは収入によって 異なる自己負担となるものの、PSDのような加入者に対する収入枠制限はありません。APA の受給条件は、フランス国内に15年以上合法的に滞在し、60歳以上でかつ介護度GIR1〜4 までの方となります。

 

従来の介護法PSDとの違いは?

 1997年導入されたこのPSDは、要介護度の非常に高いGIR1〜3の方のみを対象にしていま した。また収入においては非常に低い層のみを対象となっていました。この為、実際に対 象者は20万人足らずでした。また、管理者が県でしたので、国内でも地域によって対象者 数に大きな差がありました。

 

要介護度の評価測定法は?

 県の専門医を含む社会医療チームが6段階のAGGIR(Autonomie Gerontologique Groupes Iso-Ressources)要介護度評価測定方式によって測定します。項目は全般、排泄・身体清潔、 衣服着脱、食事、移動自立度を「完全に一人でできる」、「多少問題有りだが部分的になら ばできる」「全くできない」3段階で、評価します。

 

手続き方法は?

 当該者本人またはその家族、法的代表者が県の担当窓口にて申請します。申請後、各自に 必要書類が送られます。申請者はこれに記入後、添付書類(ID証明、納税書類、銀行証明) を返送します。県の担当課は本書類受理後、社会医療班が各自の要介護度評価の為の訪問を 行います。ここで必要な介護プランを立てます。窓口での申請から合計2ヶ月以内に、県の 担当課がAPAの給付の有無決定を知らせます。

 

APAの支給額は?

 当該者の要介護度、収入(動・不動財産を含む)によって、また在宅か施設入居かで異な り、全国同条件です。収入により、自己負担額が異なりますが、収入が6000フラン以下であれば、自己負担はありません。要介護者施設入居者への支給額は、その収入、要介護度によ らず、常に在宅者よりも低く設定してあります。これら、社会医療施設には既に要介護者へ の社会保障が確立され、介護の為の出費は発生しないよう位置付けられているからです。
 当該者の同意のもとに、滞在施設に、直接支払われるAPAの手当ては、入居者の収入によって のみではなく、要介護者への毎日の生活上、提供されるサービスの種類によって「介護料金」 が支払われます。しかし、アメニティ代金(自己負担または社会福祉手当)とケア(疾病保険 負担)とは、別途支払うことになります。

 

従来問題とされていた相続財産からの徴募は?

 従来のPSDは被介護者がなくなった後、相続財産がある場合にはそこから介護費を徴収すると いうものでした。この為、大変不人気な政策となり、必要であってもPSDを申請しない高齢者が 多い現状でした。この問題は高齢者患者団体から長年指摘されており、それを受けてAPAでは、 相続財産からの徴募は廃止されることとなりました。

 

表1:6段階のAGGIR要介護度評価(支給最高限度額:在宅/施設)

 

GIR1 就床、あるいは一日座姿勢のみ、知的能力低下大、 要介護度大、死期に近い高齢者(1067ユーロ/335ユーロ)
GIR2 自分ひとりでは移動不可能、または移動は可能である が知的能力が低下した高齢者(914ユーロ/335ユーロ)
GIR3 知的能力正常、最低運動能力も保存されているが、日常生活(食事・ 排泄・清潔・衣服着脱)に人の手を時々要する高齢者(686ユーロ/167ユーロ)
GIR4 自分ひとりで移動可能ながら、日常生活(食事・排泄・衣服着脱)に 人の手を要する高齢者(457ユーロ/167ユーロ)
GIR5 自宅での移動、生活にほぼ問題はないが、清潔、食事の 用意、生活品の買い物等にホーム・サービスを要する
GIR6 完全自立な高齢者

 

フランスにおける高齢者施設各種

 フランスでは、要介護度・自立度、入居希望者およびこの家族(子ども、嫁、婿、孫)の収入 によって、様々なタイプの長期滞在施設が私立、公立、更に、協定、非協定併せ約10,300以上あ る。その料金幅も広く、月763ユーロ(5000フラン)から3049ユーロ(20,000フラン)のものまで あり、月当たりの平均自己負担額は、1145ユーロ(7500フラン)である。(データ:FMPMutualite 2002年1-2月号)料金とは別に、入居希望者は、自分の健康状態に最もあったタイプの医療サービ スを持つ施設を選択する必要がある。
一方、低所得者へのAide Sociale社会福祉手当給付の条件としては、当該者の収入の内、90%以上 が協定施設の食・住居費に費やされ、家族の最低食費義務額を差し引いた額が支給される。

 

 

表2:施設各種

 

名称 月額料金 特徴 対象者 医療体制
寮-在宅(Foyer-Logement) 約305ユーロ〜763ユーロ(2000〜5000フラン) 在宅とホームの中間。ワンルーム、または2ルームのアパート型。個人の家具などを持ち込める。 自立 なし
サービス・レジデンス(Residence service) 約915ユーロ(6000フラン) アパートを購入または賃貸 自立、半自立 医療警備有り
地方老人ホームMaison d’Accueil Rurale pour Personnes Agees (MARPA) 約915ユーロ(6000フラン) 小規模(15〜20人)自立度促進治療計画参加 自立、半自立 護、医師の定期的な訪問有り
自立・非自立老人ホームMaison d’Accueil pour Personnes Agees Autonomes et Dependantes (MAPAD) 多様 月763ユーロ(5000フラン)から3049ユーロ(20,000フラン) 多様 自立、半自立非自立 完備
Centre d’Animation Naturelle Tiree d’Occupationn Utile (CANTOU) 約915ユーロ 小規模コミュニティの生活に参加 痴呆知的能力低下  
長期滞在型入院施設Unite de Soin de Longue Duree 医療費:疾病保険より負担ハウス・アメニティ:本人または家族の負担、 または社会福祉手当。一日81ユーロ 公立病院に附属 恒常的な医療観察、ケアを要する。 病院内に併設
受け入れ家庭Famille d’Accuei 有償 県の行政局監視の下、局と提携契約を交わした家庭が高齢者受け入れる。家庭 破壊、核家族化の進む今日にあって、「新しい家族」の定義。 規定なし(現実的には、要介護度の高い非自立者には難しいかも。) 一般家庭のため、無し

 

 

データ(DRESS-Departement de Recherche et d’Etude en Sanitaire et Sociale)
  • 75歳以上の高齢者の87%、85歳以上の高齢者の73%が在宅
  • 6000人の高齢者が、有償の受け入れ家庭に迎え入れられている。
  • 75歳以上の高齢者の3%、85歳以上の5%が、寮—住宅に入居
  • 75歳以上の高齢者の9%、85歳以上の高齢者の19%が、老人ホーム(総称)に入居
  • 長期滞在型入院施設は、85歳以上の高齢者の3%を収容している。
  • 1995年前後、700,000人の65歳以上の高齢者(8%)が、要介護者であり、65〜69歳 では1.7%、80歳以上では9%、85歳以上では20%、90歳以上では35%が要介護者であった。
  • 2020年、フランス人人口の10%が、75歳以上、3%が85歳以上となる。