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資料・書籍・その他 2002-02-13

フランスレポート|ストの結末と種明かし

フランスにおける開業医のストにおいて、妥協案に双方の歩み寄りが見られ、 一旦休戦となりました。今回のストは、かなり大掛かりで診療報酬を思い切って 20ユーロに値上げてほしいという単純な要求でした。これは従来115フラン だった診察報酬が、ユーロへの変換で、小数点のつく端数になってしまい会計が 面倒になる事からの要求でした。

 さて、こんなに医療者がストばかりしていて、国民の保健は一体どうなってい るのか?という疑問が浮かび上がってきます。種明かしをしますとマスコミの報 道ではスト参加者が医師の8割、全国の産科病棟一斉閉鎖等の報道があります。 しかし、これは組合側の数字発表であって、実際には、そうではないのです。と いうのもストが発表されると、組合が、「今回のストの趣旨に賛同しますか?」 とアンケートを取ります。これに「イエス」と応えた医師は、ストに参加したと して、カウントされます。つまり、本当に物理的に、参加者全員が止業するわけ ではないのです。
 また、フランスの公務員法では、ストを認めていますが、ミニマム・サービス という最低限のサービス保証を義務付けています。この為、病棟閉鎖などの時に は、医師や看護婦は、「我々はストに参加しています。」「何々要求」「何々反 対」と言ったゼッケンやワッペンを付けて、患者さんの治療に当たります。これ も、病院閉鎖デモに参加したとカウントされるのです。
 さらに、デモ行進参加が呼びかけられると、科から、一人、比較的新入の職員 が、あるいは、くじ引きで負けた者などが、いやいやながら、参加する事も、目 にします。この時季ですと、「寒いのに街頭に出るのは嫌だな・・・」、初夏で すと、「病院の中にいるより、気持ちいい散歩になる」と言った風で、要求闘志 はどこへやら・・・。その間のお給料も出ます。勿論、熱心な活動家もいます。 彼らの中には、組合にかなり傾倒しているお医者さん、プロのスト屋さん等もい ます。

 ストが継続される事で確かに予約が取りにくくなるのは事実です。しかし、も しもこれが原因で、生命に関わるような言わば予見可能な人災事故が発生してし まった場合、医療者側は、間違いなく医療裁判で負けます。ですので、本当に、 スト・デモばかりしている訳では実はないのです。

 以上の事から今回のような「ユーロ導入における診療報酬の便乗値上げ」も 事情のわかった国民はさめた目で見ているようです。