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資料・書籍・その他 2001-12-07

フランスレポート|フランスにおける高度医療機器供給の遅れ

2001年10月23,24日パリで「医療画像学会」が開催された。この席で、医療技術産業全国組合SNITEM(Syndicat National des Industries de Technologies Medicales)とフランス放射線・医療画像学会SFR(Societe Francaise de Radiologie et d’Imagerie medical)は、フランスにおける高度医療機器の供給不足問題について発表した。

発表によると、2000年のフランス国内におけるMRIの台数は196台、PETスキャンは5台であり、この数字を人口100万人当りでみると、主要先進国中、最下位に位置づけられる事が明らかとなった(図1、図2参照)。 この適正台数問題に対し、2000年3月、当時のオブリー雇用連帯相は、MRI機器94台の設置増を約束し、今年2月の時点では88台の新設置許可が下りていた。しかし実際に設置されたのは、実に2台のみとなっている。SFR書記長のPr.ギィ・フリジャによると、フランスにおけるMRIの適正台数は300台、PETスキャンの適正台数は(がん早期発見の為にも)50〜60台としている。

高度医療機器の供給不足は、フランスの医療現場において深刻な画像診断の遅れを生んでいる。国内のMRI処方の95%を占める、350名の病院勤務オンコロジー(がん)医、450名の病院勤務神経科医を対象に行った調査によると、一ヶ月間にMRI検査を処方する回数は、オンコロジー科医は平均7.7回、神経科医は平均15.8回。また患者が予約を取るための待機期間は、オンコロジー科では平均29.8日間、神経科では平均45.2日間であるとしている(オンコロジー科の方が短いのは、ガン疾患専門医療機関でのMRI設備率が、全国平均よりやや高いためである)。
しかし、両科を平均しても約38日間の検査予約待ちを患者は強いられていることになる。

同機器の供給状態は地域によっても差があり、不足の著しいアルザス、フランシュ・コンテ、中部、リムジン、アキテーヌ地方では、「2ヶ月間予約待ち」の例も報告されている。この状態に、医師の86%が診断・治療の困難を訴えている。また神経科医の54%、オンコロジー科医の60%が「処方を躊躇う事がしばしばある」と回答している。

救急のケース等については予約待ち期間の短縮が期待できる為、医師によってはそれぞれの“裏技”を使う事もある。例えば、「患者・事務秘書に代わって医師自らが予約を依頼する(89%)」「入院させる(32%)」「他の病院や施設を利用する(7%)」等である。
しかし、全ての患者にこれらの裏技が使われるわけではない。不特定住居・労働者・無収入、等の患者に対しては、検査アクセスに不公平があるのも事実である。
なお、疾病金庫からの検査費用の現行償還率は70%である。

高度医療機器の絶対的な不足が明らかとなった今、適正台数へ少しでも近づけることが今後の課題となろう。