資料・書籍・その他

資料・書籍・その他 2001-08-14

フランスレポート|フランス疾病金庫審査医によるコントロールと根拠法

フランスでは、この二年連続で、社会保障全体としては財政改善がなされ黒字に転化し たが、疾病金庫部門については赤字のままであることを先月お伝えした。しかもこの赤 字の主因と見られているのが、総枠予算制導入以来伸びつづけていた「病院部門」では なく「開業医部門」であり、政策も開業医支出抑制をターゲットとしたものが中心とな ってきている。このような中、フランスでは、公的保険機関による医師の医療内容コン トロールが以前よりも厳しく行われる事が予想される。実際に、以前はあまり聞かなか った指導、忠告、勧告の手紙を受け取った医師や、出頭審査を命じられた患者の話もよ く聞くようになった。

 

RMO(フランス版EBM 医療指標)とあまりにもかけ離れた治療や薬剤投与がなさ れていないか、医療費と治療効果を監視する、また、事前申請の必要な治療の許可を決 定する、といったことの為に保険審査医が存在する。

一般的には、書類審査程度であるが、治療内容に疑いありと見られたケースのみ、疾病 金庫の審査医師・歯科医師・薬剤師が、患者を招集し、診察・検査を含めた聞き取りが 行われる。また、医療者側には、全ての関係情報を提出させる。ここで、過剰処方、治 療が確証された場合は、罰則がある。以下に根拠法とそれら法文テキストを抜粋翻訳す る。

 

社会保障法L.第162−29条:国公立病院および公的活動参加私立医療機関は、 疾病金庫が、その被保険者の治療に関するコントロールを行う際、これを許可する義務 がある。また、疾病金庫コントロール医務局が求めた情報の提出期限を厳守する義務が ある。

 

同162−30条:国公立病院および公的活動参加私立医療機関は、患者の入院滞在期 間が20日間より延長する場合、これを初級疾病金庫コントロール医務局に、その必要 性をコントロールできる期間内に知らせる義務がある。(例外措置あり。) 上記欠如の場合、疾病金庫は、その医療費支払い償還を拒否することができる。 またこの期間外に発生する、入院費用自己負担分を患者に請求する事は、これを禁ずる。 この場合の滞在費用は、病院側の負担とする。

 

同162−30−1条:公衆衛生法L.第710−2条に則り保健所視察医、公衆衛生 医、疾病金庫コントロール医は、医師倫理法を遵守する限り、彼らの職務執行に必要な 全ての医療情報に対してアクセス権を有する。

 

社会保障法L.第315−1条:医療コントロールは、全ての(廃疾障害、マタニティ、 疾病)給付に関して、その詳細医療事項をコントロールする。コントロール医務局は、 治療、就労停止証明書の処方、治療報酬に過剰、濫用、異見を申し立てる権利を有する。

 

同315−2条:コントロール医務局が下した医療決断に、疾病金庫はこれに従う。事 前申請許可を出した後に、その給付が医学的に不必要であったとコントロール医務局が 判断した場合、被保険者にこの旨を知らせ、給付を中止する。

 

同315−2−1条:医療費償還額について、コントロール医務局が、その治療効果を 評価する必要を認めた場合、コントロール医務局は、この患者に出頭命令を発する事が できる。この場合、患者により指名された医師一人と共に、その治療内容を再検し、最 も適した医療指針を確証する事ができる。その結果を、患者によって指名された医師(こ れが無い場合は、コントロール医務局)から患者に知らせる。同条項の執行条件につい ては、国務院政令に定める。

 

同315−3条:治療票発行、処方発行、投薬処方、搬送費用請求、(病欠、産休、労 災)手当て給付、が適正でないと判断された場合、コントロール医務局は、問題渦中の 医師が所属する組合または連盟の代表医師二名、管轄地域のコントロール医師二名と、 議長を務める地方保健所視察医または保健所代表者、によって構成される委員会に提訴 する。本委員会は、規則違反性を認めた場合、その治療、処方を行った医師に対する処 罰を国務院省令に則り決定する。処罰として経済措置が決定された場合、この金額は、 その違反処方・治療の為に疾病金庫が支払った費用まで昇る。この措置は、315−2 条に取って代わるものではない。(患者への給付中止措置も同時にあり得る。)本条項執 行に際しては、社会保障係争裁判所にて行われる。

 

社会保障法 国務院政令R.第166−1条:医療コントロールを行う目的で、コン トロール医務官は、被保険者が患者として利用した全ての医療機関、科、研究所、ナー シング・ホーム、施設への自由なアクセス権を有する。医療倫理法中の守秘義務を遵守 しつつ、担当主治医は、全ての医療情報、書類を開示しなければならない。コントロー ル医務官は、患者である被保険者およびその扶養者をいつでも検査する事ができる。担 当主治医は、患者またはコントロール医務官の要望があれば、これに臨席する。

 

同166−2条:コントロール医務官は、担当主治医からの意見聞き取りを行った後、 被保険者およびその扶養者への治療内容が、医学的に適正でないと認めた場合、金庫は 給付を拒否することができる。 コントロール医務官は、担当主治医からの意見聞き取りを行った後、被保険者およびそ の扶養者が外来受診、入院滞在する医療機関・科が、患者の症状にふさわしくないと認 めた場合、患者の自宅に最も近い医療機関で、患者の症状に適した治療が受けられるで あろう医療機関の料金を、償還の上限額とする。

 

同166−8条:本章条項執行のための、コントロール医務官とは、審査医、審査歯科 外科医師、審査薬剤師を含めるメンバーとする。

 

同315−1条:コントロール医務局が、医療機関の活動について審査・調査を行った 際には、この結果を当該医療機関長(病院長、CEO等)および、管轄地域病院計画機 構に知らせる。


Code de la Securite Sociale
Legislative:法令(概要)
例えば、特定疾患や長期慢性指定疾患の人は対象外になる。