リサーチエッセイ

リサーチエッセイNo. 78 2019-11-11

調剤医療費の動向と調剤薬局の経営概況

 

  • 018年度の調剤報酬改定では、対物業務が減点されたが、対人業務の増点がこれを打ち消して、調剤技術料等の伸びは全体でプラスであった。
  • 2018年度の改定は、大調剤報酬改定は大型チェーン門前薬局に打撃を与えたが、効率化や経営努力等もあって、調剤専業大手5社の当期純利益は合計で204億円である。こから配当を行った上で、利益剰余金156億円を積み増し、2018年度末の内部留保(利益剰余金)は1,488億円に達している。
  • ドラッグストアは、大手調剤薬局ほどには門前型ではないため、2018年度改定の打撃が相対的に小さい。また、ドラッグストアは収益性の高いOTC医薬品を扱っており、改定による利益率の変動も少ない。
  • これまでの調剤報酬改定では、大型門前か中小薬局かで線引きされてきたが、いまや中小薬局が次々に大手の傘下に入っている。ドラッグストアの台頭もある。大型門前か中小かという切り口はそぐわなくなっているのではないかと思われる。
  • 2018年度改定で対人業務を評価した結果、処方せん1枚当たり薬学管理料は2017年度の443円から2018年度には479円と1.1倍に上昇した。医薬分業が「患者にとってのメリットが感じられない」という指摘もある中、国は患者負担に見合った業務が行われているのか検証すべきである。
  • 対物業務である調剤料は2018年度に引き下げられたが、薬局の調剤料は一定の日数までは処方日数に比例して上昇するため、長期処方の拡大を背景に処方せん受付1回当たりの調剤料が増加した。医科入院外調剤料は日数にかかわらず一定であり、調剤薬局の調剤料の仕組みに合理性はない。薬局調剤料のあり方を見直すべきである。

ダウンロード  (約 452 KB)